2018年に生まれた筋肉体操は、レギュラー番組化、書籍化などの展開を経て、2026年に新作が誕生した(順天堂大学のYouTubeチャンネルに掲載)。誰でもできる筋肉体操ではあるものの、気を付けるポイントはあるのか。筋トレに取り組む上で注意してほしいところを聞いてみた。
――老若男女問わず、誰でも動画を見てやってみれば、楽しく取り組めるのが筋肉体操だと思います。やってみる上で注意してほしいところがあれば、教えていただけますか。
「これは筋肉体操に限らず筋トレ全般にいえることですが、レップ数や重量にこだわりすぎないでほしいというところです。筋肉体操は自重でのトレーニングなので重量は変えられませんが、例えばベンチプレスなどの器具を使ったトレーニングだと、『ベンチ何キロ?』と持ち上げられる重さを競い合ってしまいがち。重さにこだわることで動作が小さくなったり、バウンドや反動を使ったり。いたずらに使用重量が増えて怪我のリスクばかりが高まってしまうことがよくあります。ですので、筋肉体操でも、動作を『ごまかさないで』という意図を込めた声掛けを随所にいれています」
――目標回数があり、そこに近づいていくと、その回数をこなすことが目的になってしまい、動作がいいかげんになってしまうことはよくあります。
「そうですね。だから、プッシュアップなら『胸がつくまでおろす』『腰をそらさずに上げる』、スクワットなら『深くしゃがむ』など、ごまかしてしまいがちなポイントに対して注意喚起をうながす声掛けを意識して入れています。事前のレクチャーだけではなく、動きにごまかしが入りそうになるタイミングを見計らって、ポイントを指摘するようにしています」
――たくさん回数をこなせたり、より重いものを持てたりする人が偉いわけではありませんね。
「『10回しかできないの?俺は20回できるぜ』みたいな会話をよく耳にしますが、良くないなぁと私は思います。ごまかしながらやった20回よりも、丁寧にやった10回、浅いスクワット20回よりも深いスクワット10回のほうが、価値があります。筋トレの回数や重量は手段にすぎず、目的は筋肉を大きく強くすること。それによってかっこいい身体や健康な身体をつくること、競技者であればパフォーマンスを高めることが目的のはずですから」
――そうした風潮も含めて、筋肉体操を最初に出された頃と比べて、社会の中における筋トレへの認識が変わってきた実感はありますか。
「筋肉体操がきっかけとは言えませんが、世の中が本気の筋トレに対してポジティブになったのは感じますね。筋肉体操が始まる少し前は、『楽をして身体を変える』みたいなコンテンツがもてはやされていたと感じます。『たった5分で楽々変われる』とか、『座っているだけで○キロやせる』のようなものが溢れていました」
――TV番組や、書店に並ぶ本のタイトルもどれも似たようなものだった記憶です。
「風潮が変わりはじめたのは、RIZAPのブームで著名人がダイエットに次々と成功したあたりからかもしれません。『しっかりとやらないとやっぱり高い効果は得られない』というのを多くの人が痛感し、流れが変わっていったように感じます。楽な方法を求めていた世の中から、『数分でもこれだけ追い込むトレーニングができるんだ』というような、キツいけど効果的な充実感のあるトレーニングが受け入れられるようになっていったと感じます」
(続く)
【プロフィール】
谷本道哉(たにもと・みちや)
1972年、静岡県出身。大阪大学工学部卒業、㈱パシフィックコンサルタンツ勤務を経て東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了。順天堂大学スポーツ健康科学部教授(筋生理学、トレーニング科学)。『筋トレまるわかり大事典』(ベースボール・マガジン社)、『スポーツ科学の教科書』(岩波ジュニア新書)など著書は多数。NHK「みんなで筋肉体操」「筋肉アワー」「ニュースーン」、テレビ朝日「モーニングショー」などで運動の効果をわかりやすく解説する講師としても活躍。座右の銘は「人は変われる」
インタビュー/木村雄大

