一羽の鳩が挑戦を後押し 世界で戦う5児の母・山田よう子、アームレスリング全日本大会に向けた葛藤と決意




6月13~14日、秋田・あきた芸術劇場ミルハスにてJAWAアームレスリング全日本大会が開催される。ここでは、今大会に臨むアームレスリング女王・山田よう子の葛藤と決意にスポットを当てる。山田は21年前、日本人女子で初めて世界大会を制したトップ選手である。

【写真】剛腕女王・山田の名勝負の数々

大会のエントリー期日が刻一刻と迫る中、山田は今大会に出場するか迷っていた。競技歴は28年、シングルマザーとして5人の子どもを育てつつ、池口恵観大阿闍梨、池口豪泉大阿闍梨の弟子として今は社会貢献や講演会などを行なってマルチに活躍する最中の葛藤だった。

昨年からケガの悪化や子育ての壁に直面し、十分な練習時間も確保できず、モチベーションがまったく上がらなくなっていたからだ。

山田が悩んでいた時、1匹の鳩が1週間近く山田家のベランダに来ていた。ベランダにあった布団を捨てようと持ち上げた瞬間、その中に鳩がいたのだ。

偶然出会った鳩

山田が鳩をどかそうとしても、まったく動かない。不思議に思い鳩に話しかけると、鳩が卵を守っていることがわかった。そんな姿を見た山田は、布団を捨てるのをやめ、卵の成長を見守ることにした。まだ孵化してない卵に“ジュリアス”と名前を付けた。この名は、山田が小学生の頃から好きなマイクタイソンが、鳩に一番初めに付けた名前である。

山田は毎日、母鳩と卵に話しかけた。しばらくすると卵は孵化し、雛鳩は山田の部屋の中まで入って来て、時には一緒に寝ることもあった。

野生の鳩は飼っていけないことを知っていた山田は、「いずれこの子も巣立っていくんだろうな……」と考えていた。このタイミングで大会出場だけでなく、自身の会社の名前も悩んでいたこともあり、大好きなマイクタイソン、鳩……という偶然から運命を感じ、会社の名前を「ジュリアス」に決めた。

そこから約1か月が経過。アームレスリング全日本大会への出場も決められない時に帰宅すると、ベランダにジュリアスがいないではないか。「巣立っていったんだ……」とベランダに出た山田はすぐに目をつぶり、ジュリアスが最後どうだったのかを魂で感じ取ろうと思った。

最近の山田は護摩行などをやっていくうち、いろいろと感じ取る力が強くなっていた。アドバイスなどもあり、「周囲が笑顔になる事をやりたい!」とよく口にしていた。しかし、この日ジュリアスを感じようと試みた結果は、壁の端に立ち尽くして怯えているジュリアスのビジョンしか見えなかった。そこから先がどうしても見えなかった。

悩んでいる時、自分を救い元気を与えてくれたジュリアスをすぐに探しに行き、家の下を見ると羽が落ちていた。山田はその瞬間に「やっぱり……」と思ったそうだ。

山田には、その羽を見て確信するものがあったという。とはいえ、まだジュリアスを見つけていないことには信じたくない。鳩の帰りをひたすらに待った。

このこともあり、練習になかなか手が付けられない期間が続いたが、自分と向き合い迷いを断ち切った。山田はついに全日本大会に出る事を決意した。

今年9月には、日本で21年ぶりに世界大会が開催される。山田がかつて偉業を成し遂げた世界大会。その大舞台への切符がかかっているのが全日本大会だ。モチベーションの維持に苦心していた山田だが、ジュリアスと出会い気持ちが前に進んだという。

数々の名勝負を繰り広げてきた山田

エントリー最終日。準備期間は決して長くないが山田は「ジュリアスとの出会いを無駄にしたくないので、まずは全日本大会で必ず優勝して9月の世界大会への切符を手に入れたいと思います!」と語り、エントリーを表明した。

「アスリートは体を鍛えるトレーニングも必要ですけど、私は魂や気持ちが一番必要で鍛えないといけない事だと思ってます。それはきっと、試合をたくさんやっていたらわかると思います」

5月25日の誕生日で、50歳を迎える山田。「いろいろと区切りもつけたいと思うので六本木の文明堂で誕生日会をやります。参加いただける方はぜひインスタからDMをください」とも語った。

再び世界へ――。山田は“魂”を武器に、全日本大会へ挑む。