「棄権したほうがいいのかなとずっと思っていて。ステージに立つ資格が私にはないのかなとずっと思ってしまい…」
バックステージに戻ってきた安井友梨は、喜びと安堵が入り混じった表情でそう言葉を紡ぎ出した。
8月15日に行なわれた「オールジャパン・ウィメンズフィットモデル・チャンピオンシップス2026」で安井は総合優勝を果たし、大会5連覇を達成した。だが、1週間前のビキニフィットネスの日本一決戦で、10年間守ってきた女王の座を手放してしまった事実が重くのしかかり、「どういう風に気持ちを戻したらいいのかわからなくて。ステージに立つ決心がついたのは本当に今朝ぐらいでした」という状況であった。
そんな彼女の気持ちを支え、なんとかこの日のステージに立たせたのはやはりファンの言葉であった。
「IFBB世界選手権で優勝したときよりも、11連覇できなかった今回のほうがファンの方々からメッセージやコメントをたくさんいただきました。負けたことによって、皆さんにすごく応援していただいているのだと、あらためて気づくことができ、とても大きな力をもらったんです。競技をやめたほうがいいのか…と思ってしまいましたが、『まだ頑張れる』と言っていただき、再びステージに立ちたいと思うことができました」
客席から見た安井は「どういう顔をしていいかもわからず不安を抑えるのに必死で…」と話したように、その兆候はやや見えながらも、結果として堂々としたステージで見事に優勝を奪取。身長別6連覇、オーバーオール5連覇、積み上げてきた経験と実績は伊達でなく、競技者としてリスタートのステージに十分な存在感であった。
「ステージに立つ資格がない」と彼女は言ったが、そんなわけはなかろう。2位になった“だけ”でそうなのであれば、多くの選手がその資格を失することになる。だが、その境地に立った者だけにしか感じることのできない、トップに立ち続けることの誇り、そして、「優勝して当たり前」という周囲の目に晒される、大きなプレッシャーと毎年戦い続けているからこそ出ててきた言葉なのだろう。
2カ月弱後の10月には、現在6連覇中のビキニフィットネスのオーバーオール戦「フィットネス・ジャパン・グランドチャンピオンシップス2026」に出場する。連覇継続か、新女王の誕生か、非常に見ごたえのある大会になるのは間違いない。どんな結果になろうとも、これまでと同様に安井友梨が安井友梨らしく、いやそれ以上に彼女らしい姿でステージに帰ってくる姿を楽しみに待ちたい。
文・写真/木村雄大


