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人を前に進めるトレーナーの役割【髙田一也のマッスルラウンジ 第9回】

タレントや会社経営者など多くのクライアントを指導してきたパーソナルトレーナー、髙田一也が「仕事」と「トレーニング」、「社会」と「トレーニング」の適切な関係性を探るこの連載。今回は自分自身を前に進めていく力について。

体だけでなく心の指導も大切です

フィットネスや健康、体づくりの仕事に携わった以上、クライアントさんに対して適切なトレーニング指導がほどこせるのは当たり前の話です。大切なのは、心の指導もしっかりとできるかどうか。そこでは、指導する側のそれまでの経験が重要な意味を帯びてくるように思えます。

僕はかつて、時間的な余裕も精神的な余裕も失った時期がありました。心が完全に壊れてしまい、お医者さんからは入院をすすめられたほどでした。

でも、心を壊して損をするのは自分です。また、失った時間は二度とは戻ってきません。極限にまで追い詰められた状況でも、誰も助けてはくれないし、自分自身で生きていかなくてはいけない。これまでの人生で、そういった経験が何度かあります。

そこで僕は、他力本願な考えをすべて捨て去りました。結局は、自分一人で現状を打破していかなければいけない。だったら、たとえ厳しい状況に追い込まれても、そのすべてを自分のプラスに変えていこうと。

誰も助けてくれる人がいなかったという状況が、僕をこういった考え方に導いてくれました。これはトレーニングにも通じます。どんなにいい指導を受けても、結局は実践するのは自分です。また、ハードに追い込んだ先には、理想とする肉体が必ず待っているものです。今にして思うと、頼れるものがなかった環境が僕を成長させてくれたように思います。

ただ、僕の人生が切実なもので、私自身は身ひとつの人間だったので何もかも自分でやらざるをえませんでした。もっと恵まれた人がいることは確かです。いい大学を卒業して、家柄もよく、すべてが備わっているように思えるのに、さらに上を目指して努力を続ける人もいます。

やるか、やらないか、というのは、やらなければいけないからやる、というのではなく、その人の人生や仕事に対する価値観の表れのような気がします。「やり抜く」ということは、きっとそういうことなんでしょう。

僕のクライアントさんにも、そういった「やり抜く」力を持った方たちがいらっしゃいます。みなさんに共通して言えることは、トレーニングに対しても、指導されたことがすべて実践されるところです。

忙しいなか、トレーニング時間を確保して、食事も管理し、しっかりと体を作りあげるのです。トレーナーは、そういった方たちを指導する立場にあるのです。表面上の指導は、人に影響を与える引力にはなりえません。言葉ではない部分でいかにしてクライアントさんの心を引っ張っていくか。今の僕には、あのころの経験が役立っているように思えます。

高田一也(たかだ・かずや)
1970年、東京都出身。新宿御苑のパーソナルトレーニングジム「TREGIS(トレジス)」代表。華奢な体を改善するため、1995年よりウエイトトレーニングを開始。2003年からはパーソナルトレーナーとしての活動をスタートさせ、同時にボディビル大会にも出場。3度の優勝を果たす。09年以降はパーソナルトレーナーとしての活動に専念し、11年に「TREGIS」を設立。自らのカラダを磨き上げてきた経験とノウハウを活かし、これまでに多数のタレントやモデル、ダンサー、医師、薬剤師、格闘家、エアロインストラクター、会社経営者など1000名超を指導。その確かな指導法は雑誌やテレビなどのメディアにも取り上げられる。
TREGIS 公式HP