「とりあえず速ければ」から脱却。マッチョガードの強さに迫る 【岡本飛竜(前編)】




試合中ほぼ走りっぱなし、ジャンプにコンタクトなど、フィジカル要素が詰め込まれた競技であるバスケットボール。漫画・SLAM DUNKでおなじみの同競技には5つのポジションが存在し、各々が支え合ってチームを形成している。

コート上の監督と呼ばれるポイントガード(PG)、外角シュートやPGの補佐を務めるシューティングガード(SG)、オールラウンドな得点能力に優れたスモールフォワード(SF)、ゴール下を主戦場とするパワーフォワード(PF)、ゴール下の要となる大黒柱・センター(C)がそれぞれの役割をはたしているのだ。

そこで本企画では各ポジションの選手に注目し、必要なフィジカルやトレーニング方法を紹介する。今回話を聞いたのは、Bリーグの強豪・アルバルク東京でPGを務める#3岡本飛竜選手。パワフルな万能型PGのフィジカルに迫った。

©️ALVARK TOKYO

フィジカル面の優位性が、攻守で好影響を及ぼす

ボール運びにゲームメイク。今回スポットを当てるPGとは、チームの中で司令塔の役割をはたすポジションだ。漫画・SLAM DUNKで例えると、該当のキャラは宮城リョータ。チームの切り込み隊長であり、個性豊かなチームメイトをまとめる存在でもある。

岡本選手は、安定したボールさばきやタフなディフェンスでチームを支えるまさに万能型PG。170㎝の体躯で大男と渡り合えるのは、鍛え上げたフィジカルの効果が大きい。

「自分はバスケ選手としては小柄ですが、それを活かして相手に嫌がられる選手になりたいと思っています。体の強さと俊敏性に関してはとくに意識して、学生時代からプロになりたいという気持ちでやってきました」

重視するのはコンタクトの強さとスタミナ。それがあるからこそ、PG・岡本飛竜としての強みが発揮される。ひとつは相手の足元まで入り、40分間プレッシャーをかけ続けるタフなディフェンスだ。鍛え上げた肉体が鎧となり、コンタクトにも屈せず圧力をかけることができるという。さらに岡本選手は筋力強化によって、オフェンススタイルにも大きな影響があったと振り返る。

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「以前は『とりあえず速ければいい』という考えでプレーをしていました。でもトップスピードから止まれる脚が必要だと気づいて、そこからプレースタイルが変わりましたね。アメリカの能力が高いガードも、ストップする能力がすごく高いんですよ。止まって切り返せる爆発力は、フィジカルトレーニングで培われたと思います」

大胆に切り込んだと思えば、ピタッと止まってシュートを放つ。強みであるスピードが活きるのも、それを制御できる筋力があるからだ。そこにワークアウトで養ったスタミナが加わることで、タフに動けるPG像があらわになる。

「ガード同士のマッチアップやサイズの大きい選手のディフェンスを抜く時などは、そこで体負けすると精神的にも余裕がなくなってきます。フィジカル面で優位性を保つことは、試合中の冷静さや視野の広さにもつながると思います」

兼ね備えた強さと冷静さ――。その陰には、努力で積み上げられたフィジカルがあった。そしてその努力の原点には、高校時代からの苦悩の日々があったという。

(後編に続く)

◆岡本選手が所属する、アルバルク東京のHPはこちら

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岡本飛竜(おかもと・ひりゅう)
1993年4月20日生まれ、鳥取県出身。延岡学園高校3年時にインターハイ・国体・ウィンターカップの3冠を達成し、拓殖大学では4年時にキャプテンを務める。大学卒業後は島根スサノオマジック、広島ドラゴンフライズ、新潟アルビレックスBBでプレー。2022年からはアルバルク東京で活躍を見せている。ポジションはPG。

取材・文/森本雄大
写真提供/アルバルク東京