男もなぎ倒すキュートな豪腕女子。アームレスリング女王の強さの秘訣は脚にあり【竹中絢音#1】




アームレスリング世界大会のジュニアの部で優勝をはたし、昨年は男子の大会でも日本一を獲得した豪腕・竹中絢音さん。キュートな笑顔に似つかわしくない、男性もビックリのその腕っぷしの強さの秘訣はどこにあるのか? 普段のトレーニングや彼女の歩みから探っていく。

アームレスリングは腕だけではない

――服を着ていてもわかる腕の太さ、やはりアームレスラーは腕トレが中心ですか?

もちろんです、選手たちはみんな上半身を鍛えています。ただ、驚かれるかもしれませんが、アームレスリングにおいては脚の力もかなり大切なんですよ。競技をご覧になるとわかると思いますが、試合では競技台に脚をかけて闘うこともできます。アームレスラーと言いつつ、じつは下半身をかなり鍛えている選手もけっこう多いと思います。

――よく遊びでやる腕相撲は腕しか使っていないですよね。

そうなんです。だから私もこの競技を始めて、脚を使っていいと知った時は「それなら誰でも倒せるじゃん」と思っていました(笑)。でも、実際はどれだけ脚の力を使って体で押しても、その力が腕に伝わっていなかったら意味がありません。なので、単純に脚の筋力を高めるだけではなく、脚の力をどれだけ腕に伝えられるかというのは、アームレスリングにおいて大事な技術のひとつになっています。

――実際に、どのようなトレーニングを行なっていますか?

当然、ダンベルやバーベルなどを使った腕や脚のトレーニングは行ないますが、脚の力を体全体や腕に伝えるためには体幹の強さが重要になってきます。なので、重い重量を扱うことで全身の力を使う感覚を身につけられるように意識しています。上半身に関しては競技で大事になってくるのは言うまでもないと思いますが、筋力を強化するためのトレーニングと、競技に活かすためのトレーニングを分けて行なっています。

――単に筋力を向上させるのではなく、競技に活かすトレーニングを意識しているのですね。

そうですね。ほぼ毎回行なうのは懸垂です。月に1、2回は腰にベルトをつけて加重した状態で行なうなど、全身を連動させて重量を扱う種目は意識して入れています。アームレスリングにおいて握力はあって損するものではないので、筋力と握力を同時に鍛えられる懸垂はかなり重視していますね。ただ、単に握力と言っても親指と人差し指で挟む力や、薬指と小指だけの握力など、学校の身体測定などで測るようなものとはまた別の形で細分化して握力を考えています。たとえば、ダンベルなどの均等に力のかかるものではなくロープや帯などを使ってある一点に負荷をかけるなど、手の中でも力のかかるポイントを調整しながらトレーニングしています。

――ただ腕や脚が強くて太ければいいものではない、というのがよくわかります。アームレスリングの技術として大切なポイントは?

一番大切なのは、「握り」だと思います。アームレスリングの試合は1秒以内で決着がつくことも珍しくありませんが、試合前に手を組んだり、握り方を決めたりするのに長い時間をかけている選手もいます。自分が一番力を発揮できるように握ったり、相手に得意な握りをさせないように握ったりしているんです。それこそ握りだけで結果が逆転するくらい影響が大きいものなので、アームレスリングの試合は相手の手を握ったところからすでに勝負が始まっているんですよ。

◆次回は彼女の歩みについて

竹中絢音(たけなか・あやね)
オールジャパンアームレスリング連盟(AJAF)所属のアームレスラー、パーソナルトレーナー、セラピスト。10歳からアームレスリングの競技を始め、中学3年生でJAWA全日本アームレスリング選手権大会の女子-55kg級と-60kg級で左右優勝、WAF世界アームレスリング選手権大会ではジュニア(18歳以下)ライトハンド優勝を達成。2022年はAJAF全日本アームレスリング選手権大会の男子A2-60kg級でライトハンド優勝、JAWA全日本アームレスリング選手権大会の女子無差別級では左右優勝をはたした。

写真提供/竹中絢音
取材・文/シュー・ハヤシ