全3回にわたる竹中絢音さんへのインタビューも今回が最終回。すでに世界の頂点にも立った彼女は今後、いったいどんな目標を持って闘い続けるのか。競技に対する深いこだわりや、見据える未来について話を聞いた。
目指すは年齢無制限の世界一
――前回は、世界大会に出場した際のお話を伺いました。大舞台を経験し、帰国してからの練習などで変わったことはありますか。
今まで動画でしか見たことがなかった世界大会を実際に経験したことで、自分の力がどこまで通用するかがわかり、このまま継続していけばいい部分と、このまま闘っていてはいけない部分が明確になりました。その中でとくに感じたのは、「世界で闘うのであれば、国内の軽量級の男子とは同じレベルで闘っていかなくてはいけない」ということ。そこからは男子の試合にも出場することが増え、練習への取り組み方が変わりました。
――男子の大会と女子の大会ではどのような違いがありますか。
純粋にパワーが違うので、同じ競技ですが感覚の部分ではまったく別ものでした。小さい時は男子に比べると力がなくても、大人の女性相手なら瞬発力で勝つことができました。でも、やはり男子を相手にするとそれでは通用しませんでした。男子や自分よりも強い人に勝つためには、もっと純粋なパワーが必要だと感じました。
――すでにジュニアで世界チャンピオンを経験されていますが、今後の目標は?
世界の舞台ではジュニアで優勝、18歳から21歳までのユースで準優勝と、順調にステップアップしてきました。そうなると、もう次の目標はシニアの世界一になるしかありません。男子の大会に出場しているのも、そのためです。
――竹中さんは階級としては-55kg級の他、無差別級に出場していますよね。一般的に体重が重いほうが有利だと思いますが、体重制限のない無差別級に出場する時でも55kg以下の体重で出場していると聞きました。その理由は?
私が世界に挑戦するのは-55kg級だからです。もちろん重いほうがそのぶんの力が乗るので強いのですが、どれだけ体重を増やして強くなっても、その力を世界大会の-55kg級で出せなければ意味がありません。なので、無差別級に出場する時も絞っています。
――-55kg級という階級にこだわりを持っているのですね。
この階級では、誰にも負けない世界一を目指しています。そのために男子の大会に出場したり、無差別級の試合に絞って出たりして自分よりも強い相手と不利な条件で闘い、世界一を獲得するための特訓を積んできました。私は身長が155cmで-55kg級の中では小さいほうですが、この階級で勝てたらひとつ上の-60kg級に挑戦することも考えています。私はどんな相手に対しても自分の力を出せるようにしているので、これからもそのスタイルは崩さずに続けていきます。
竹中絢音(たけなか・あやね)
オールジャパンアームレスリング連盟(AJAF)所属のアームレスラー、パーソナルトレーナー、セラピスト。10歳からアームレスリングの競技を始め、中学3年生でJAWA全日本アームレスリング選手権大会の女子-55kg級と-60kg級で左右優勝、WAF世界アームレスリング選手権大会ではジュニア(18歳以下)ライトハンド優勝を達成。2022年はAJAF全日本アームレスリング選手権大会の男子A2-60kg級でライトハンド優勝、JAWA全日本アームレスリング選手権大会の女子無差別級では左右優勝をはたした。
写真提供/竹中絢音
取材・文・インタビュー写真/シュー・ハヤシ