Jリーグ元年の1993年に、地元の清水エスパルスに加入。そこから30年となる今期も、伊東輝悦の肩書きはJリーガーのままである。年齢だけで言えば三浦知良(1967年2月26日生)、村木伸二(1973年8月1日生)が上回るが、ことJリーグに限れば30年にわたってリーグ一筋でプレーしてきた唯一無二の存在だ。“マイアミの奇跡”の立役者として名を馳せた男が、これほど長く現役を続けられる理由は何なのか。中山雅史監督率いるアスルクラロ沼津所属の伊東を訪ね、48歳の肉体を支えるトレーニング理論に耳を傾けてみた。
プロではない普通の意識の高い人よりも考えてないかもしれない
——マイアミの奇跡から話を戻しましょう。いい意味で肩の力が抜けている印象を受けますが、そうなると当然、食事面も……。
「全然何もない(笑)。パーソナルをやった頃は『油をあまり摂らないように』という注意はありましたけど、その時も『別に』という感じで。一定期間は意識してやってみましたけど、そんなに変化は感じなかったですよ。むしろストレスが溜まるなと思ったくらいで、自分にはマイナスだと思ったのですぐに止めました。変わったことと言えば、2年前くらいからプロテインを飲み始めたくらいです」
——それは大きな変化ですね。それまでは一切、サプリメントは摂らなかったですか。
「普通の食事だけで、サプリメントを摂ることはなかったです。今のプロテインもトレーニングの後の1回だけですしね。プロテインの会社の人が来てくれて、選手の前で説明をしてくれたんですよ。『試してみたらどうですか、これなら飲みやすいですよ』なんて言われたので、それで2年前から飲み始めた感じです。でも基本的には食事でバランスよく栄養が摂れればいいかな、というくらいにしか考えてないですけどね」
——筋肉を維持するためには、数時間おきにエネルギーを補給というのが一般的ではあります。
「まったく考えたこともないですね(笑)。普通に1日3食です。プロの選手ではないのに意識の高い人もいるじゃないですか。もしかしたら、そういう人よりも考えてないかもしれないし、その人のほうがいろいろと気をつかっていると思います」
——そうは言っても奥様は気をつかわれているでしょう。
「それはあると思いますけど、自分のほうから食事に関してリクエストすることはなかったですね。逆に栄養士をつけて科学的にやっていたら、もしかしたらストレスで潰れていたかもしれないです。とりあえず食事に気をつかわなくても調子は悪くなかったので、正解だったかどうかはわからないですけどよかったんじゃないですかね。ナチュラルでどこまでできるのか、という単純な興味もありましたし」