骨盤と後頭骨の連動運動からなる骨盤呼吸法と、その呼吸法を利用した全身の骨格と筋肉の調整のための一連体操「ピルビスワーク」を考案した立花みどり先生のインタビュー。後半となる今回はピルビスワークの概要とその効果について。
―――呼吸と人体の骨を研究し、編み出されたのがピルビスワークなのですね。
「はい、正しい呼吸というものを研究していき、骨に行き着きました。ウォーキング、キネシオロジー、カイロプラクティックなど複数の先生から学び、また専門の書籍を端から読みました。でも、骨盤の動きが呼吸に影響することをそれまでは全く知りませんでした。骨盤の動きというのは仙骨の動きを指しますが、ピルビスワークでは、骨盤と後頭骨の連動運動からなる骨盤呼吸法と、その呼吸法を利用した全身の骨格と筋肉の調整のための一連の体操をご指導させていただいております。実はピルビスワークは”哲学”でもあり、人間の体の動きに対する考え方なのです」
―――正しい人の体の動きについて、教えてください。
「人の体には常に圧力がかかっています。その圧力の負荷をバランスよく逃がすために骨盤輪がショックアブソーバーのような役割をしています。さらに、脊柱にある椎間板は、脊柱が蛇動運動できるようにできていて、その蛇動運動には骨盤の中央にある仙骨の動きが影響しています。
仙骨は人間が直立した姿勢で、前方にやや傾いています。仙骨の角度の影響で、腰椎の前弯ができ、脳を垂直に乗せるためには胸椎で後弯し、頚椎は前弯しています。それによって、直立した姿勢のときに、脳を垂直に乗せることができるのです。
人体の正しい動きというものは、前傾している仙骨が、垂直に起きても後傾しても、それに連なって脊椎が連動的に動く状態が理想的です。下半身においても、仙骨の角度が変わることによって、その動きが股関節に伝わり、脚の動きに影響します。骨盤の中央にある仙骨が角度を変えることで、上からの圧力と下から突き上がる力を相殺しているのです」
―――骨盤は、人の体の動きにとって要となる部分なのでしょうか。
「そうです。骨盤のバランスが崩れた状態で背骨のアライメントを維持しようとすると、体全体のバランスが崩れて、背中から首へ、股関節から脚全体に圧力がかかっていきます。骨盤のバランスが崩れた姿勢が続けば、背中や首の痛み、腰や膝の不調にもつながります。
また骨盤には前傾・後傾、挙上・下制、回旋といった動きがあります。一方、腰椎の動きは前弯、後弯、側弯のみです。ダイナミックに体を捻る時には、骨盤の柔軟な動きが必要になります。前傾はできるけど、後傾はできない。右への下制は大きくても、左の下制が小さいなど、人によって骨盤の動きには得手、不得手というものがあります。それがなぜ生まれるのかは、幼い時からの生活様式、習慣から起こる体の使い癖です。毎日ピルビスワークを行うことで、体の動きはほぼリセットできるので、毎日歯を磨くことで虫歯を防ぐのと同じように、毎日体の歪みはリセットするのが良いのです」
―――骨盤の動きを学び、日常の所作や動作をスムーズにできるようになると、スポーツのパフォーマンスも向上していくのでしょうか。
「はい、それは絶対と言っていいでしょう。さらに、ケガや故障などが少なくなり、選手生命も伸びると思います。ピルビスワークは、人体の構造とメカニズムを向上させるので、あらゆるスポーツに応用できると思います」
―――さらに、立花先生はケアの概念もお持ちです。
「体に影響するのはストレスや疲労だけでなく、『気』のようなものも考えられます。人間はエネルギーの磁場なので、その人自身のエネルギーに影響を与える場所や人というものが存在しますので、呼吸を整えたり骨格を整えることで、気の流れを良くするケアをしています。一般的には、ストレスや疲労を受けると、体が腫れたり、むくんだりしますので、それを取り除くことも大事です。スポーツ選手が行なっているのは「マッサージ」や「筋膜リリース」というケアです。一般の方でも、ゴルフの前の日にピルビスワークのケアを受けたら、すごく飛ばせるようになる方が多いのですが、まだ本格的にスポーツ業界に向けて提案をしたことはないので、ピルビスワークの哲学を知っていただくことが日本の競技記録を変える手掛かりになればいいなと思っています。
ピルビスワークでは脳波やホルモン、自律神経などのすべてのコーディネーションがうまくいったときのみに得られる充実感、高揚感が体験できるかと思います。今の時代に必要なものが詰まっていると思っています」
取材/プッシュアップ
ピルビス(Pelvis)=骨盤、ワーク(Work)=呼吸体操の造語になります。 骨盤と後頭骨の連動運動からなる骨盤呼吸法と、その呼吸法を利用した全身の骨格と筋肉の調整のための一連体操を『ピルビスワーク』(骨盤呼吸体操)といいます。一般社団法人日本ピルビスワーク協会
URL:http://www.japan-pelviswork.jp/