ご縁で出会った教え子との関係は一生涯。
エターナルにサポートしていく
――少し下世話な話になりますが、ここまでのお話を伺っているとすごラボの運営は楽ではないと感じます。毎週実施している「すごトーク」は学生の参加費も無料なんですか?
小村 はい。一般の方は1,500円をいただいています。正直、運営的には厳しいですよ(笑)。NPO法人ですので、補助金や助成金も目指していますが、スポーツは「する」「みる」がメインで「支える」をご理解いただくことはハードルが高いですね。裏方であって主役ではありませんから、出資や寄付をいただくことも困難です。ただ、スポーツを支える裏方を目指している人を支えることが私の使命ですからね。
――すごラボの会員費用としては、いただくわけですよね。
小村 おむら塾やライセンス費用としていただき、毎週日曜日(平日も相談で実施)を軸に、人間力に必要なスキルやビジネススキルの講義、すごトーク、個別相談・コーディネートを行います。プライベートな相談や心を整えることも含め、初回に23万円(税別)を設定しています。学生でも頑張れば自力で何とかできる金額ではないでしょうか。自己投資ができるかどうか、私にそれ以上の価値を感じてくれるかどうかの設定金額です。
――お金をもらうのは初回だけなんですか?
小村 はい。最初だけで、その後はエターナルでサポートしていくということにしています。1,2ヶ月で就職が決まる子もいれば、2年、3年とかかる子まで千差万別ですからね。ライセンスなので期間や回数を設定していますが、目的は資格取得ではなく未来を創ることです。就職先が決まっても悩みはなくなりませんし、何かしらの理由で戻って来る教え子たちも無償です。少しは支払ってもらっても良いかなと思ったりもしますが(笑)
――お金の壁があると、相談するのに躊躇してしまう。
小村 その通り。相談に乗る毎にお金を取るっていうのはどうしても私の性格上できない。そこで躊躇してほしくないですから。方向性が決まるまでサポートするし、そこを辞めてしまった後であっても、いつでも帰ってきてほしいんです。出会ったのもご縁ですし、いつでもホットラインというのが私のスタンス。そこは損得勘定ではなく人と人。どうしても損得や利害を考えちゃうと、駆け引きみたいになっちゃうじゃないですか。
――先々のことも考えれば決して高い費用ではないと思いますが、初回の費用だけ見ると躊躇する人も多いのでは?
小村 多いですよ。でも特に学生たちに言いたいのは、今まで人が作ったレールの人生で歩んできて、“お客様”しか経験したことがない中で、初めて自分の未来を自分の意志で叶えたいという欲求が出たのであれば、自らの意志で一歩踏み込む覚悟で来てもらいたいと思っています。
――彼らは人生の分岐点にいるわけですね。
小村 そういう子に対しては本気で対応したい。私はきっかけと選択肢しかあげられず、やるのは己。本気で向き合い未来を構築する同士となるためには、言い訳せずに立ち向かう力が欲しいんですね。なので、すごラボに入るための入試みたいなものです。本当に手に入れたければ選ぶポイントは値段ではないと考えています。見えない価値を感じることができない人は、自分をコントロールできません。本当にやりたければ、お金がないけど親に頼りたくない、でもやりたい、どうすればいいか?と未来の質問や悩みになるばず。私は、その人の私と関わる覚悟を見ています。そこが噛み合わなければ、その人の人生を伴に歩めませんからね。
――すごラボをこの立川市に拠点を置いていて、やや都心からは遠くて躊躇する人もいるんじゃないかと思うのですが。
小村 それも同じ話だと思います。本当に必要なことに関しては、心で動き、脳ミソは後付けです。お金、場所、時間を言い訳にしてしまうということは、心ではなく脳ミソで考えてブレーキしています。つまり本気で求めていないということです。やることを前提に未来に悩むと、解決策や方法、クリアする選択肢が生まれます。何かに言い訳してブレーキを踏むと、前進しないという選択を選ぶので進化はありません。その差が未来で成功できるか否かのポイントなのかなと思います。
――実際にこれまでの教え子の中で、遠くから通っていた方もいらっしゃった。
小村 今、来てくれている教え子たちの平均は片道1時間を超える子がほとんどではないでしょうか。昨年は大阪や愛知から毎週休まず1年間通ってきた子もいます。2人ともBリーグ球団に就職が決まりました。そのような教え子と比較すると、都内近郊なら立川は近いでしょう。実は未来を決めているのは自分自身。有名な話しで、水が半分入っているコップを見て、まだ半分もあると思うか、もう半分しかないかと思うかによってその先の考え方が変わるわけです。行かないと決めてしまえばそれで終わりですけど、行く前提で悩めば未来が拓けますね。諦めるか、未来を悩み模索するかで人生も変わるかもしれません。粘り強く来てくれた子ほど、良いところに就職している気がしますね。
――小村さんにとっても教え子の活躍はやっぱり誇らしいですか。
小村 もちろんです。この「先生と教え子」っていう関係がいいですよね。メンタルトレーナー時代はトレーナーとクライアントっていう関係性でしたけど、どうしてもその部分だけのビジネスというという感じで、契約が終わったら終わり。それは寂しいなって。人と人とのご縁に契約ってないじゃないですか。一生涯だと思っています。その子のことを考えて、当事者意識を持って素敵な未来を導いてあげていきたいですね。
――卒業してもその関係は崩れない。
小村 何年かぶりにあった教え子でも、先生と生徒なんですよね。だから私が関わって、巣立っていった子たちを「教え子」って呼んでいます。そういう関係性ってお金じゃないし、何かを共に過ごした日々って崩れない、ブレないじゃないですか。ブラしたくない。すれ違う人の数の方が多い世の中において、向き合うことができたのは奇跡。そういう人たちにもっと私の人脈やノウハウを使ってもらって、スポーツ業界の発展に努めていってほしいと思います。
※次回、小村さんの提唱する「デュアルメイキング」について詳しくお聞きします。
NPO法人スポーツ業界おしごとラボ 理事長。一般社団法人ファンダシオン理事、スポーツジョブライセンス認定委員長。小村スポーツ職業紹介所 所長。スポーツメンタルトレーナーとして多くのアスリートをサポートし、2006年に総合学園ヒューマンアカデミー「スポーツマネジメント講座」を立ち上げる傍ら、数百名の方向性を確立する個人プロデューサーとして活動。人生のゴール設定と今やるべきミッションを明確にする「デュアルメイキング」構築者として多くの人をアドバイス、業界へ橋渡しをしている。
NPO法人スポーツ業界おしごとラボ HP→http://sgolab.or.jp/
聞き手・撮影/木村雄大