日体大エースが見せた、心を動かす圧倒的熱量。学生トップフィジーカーは「自由に、自分らしく」ステージに立つ




2021年と今年の東京選手権、2021年・22年の関東学生選手権、全日本学生選手権……彼が銀メダルを手にするシーンを、6度、目にしてきた。だからこそ、彼が金メダルを手に笑顔を見せるシーンを見ると、赤の他人でありながら少々嬉しさを覚えたものだ。

日本体育大学3年生・石山檀。今夏の「オールジャパン・ジュニア・フィットネス・チャンピオンシップス」(23歳以下の日本一決定戦)に続き、9/23(土)に行なわれた「第4回関東学生フィジーク選手権」の176cm以下級、そしてオーバーオール優勝を獲得した男だ。

【フォト】学生トップレベルのフィジークボディを見せる石山

「関東学生のレベルが上がっていることに、かなり驚きがありました。正直なところ仕上がりが完璧とは言えなかったので不安はありましたが、応援してくれる方々の盛り上がりがあり、それで気持ちも高まり、結果につなげることができたのかなと思います」

ステージを終え、安堵の表情でそう話す石山。関東学生においては、上述の通り2年連続2位。上には常に川中健介(東海大学4年)がいたが、彼は一般部への専念のために学生大会は一足先に“卒業”。故に、優勝の大本命としてこの大会を迎えることになった。

「プレッシャー……は意外になかったですね。ジュニアのときは少しピリピリした感じはあったのですが、『檀は自由に、自分らしさを出していけばいい』と周りからも言われていたので、気を重く持つよりは、『自由にやっちゃえ』という感じでした(笑)。本格的に掛け声も解禁になって応援の声もかなり聞こえていたので、本当に楽しくやれました」

ジュニア世代トップフィジーカーとして、成長を続ける石山。だが、また違った姿を見せたのがこの翌日だ。これまでフィジークで出場を続けてきた彼は、ボディビルの部にも出場。そこで見せたパフォーマンスは、フィジークという競技を研究した末の洗練されたキリっとした姿とは一変、粗削りながらも「がむしゃら」「熱く」「精一杯」という言葉をそのまま表現したようなものであった。

名前がコールされると、手や胸をパンと叩いて気合い注入。比較審査の場に立つと、観客席にいる日体大の仲間たちを煽り、場の空気をつくり上げる。「自由に自分らしく」という言葉の本当の意味がわかった瞬間でもあった。その結果、ボディビルでは3位入賞をはたしている。

「石山君のあの姿を見たら、誰だって名前を呼びたくなる。今日の彼からは、学ぶべきことがたくさんあった」とは、ある他大学のOBが漏らした言葉である。学生大会だからこそ見せてほしい溢れるほどの熱量、心を動かされるパフォーマンスがそこにあったのは間違いない。

「自分の中でもまだまだ改善点はあります。満足のいく、100%の状態をつくって次も優勝したいと思います」

1週間後、今度は全国各地の学生フィジーカーが集う「全日本学生フィジーク選手権」で、さらなる本領を発揮してくれるだろう。

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