総合格闘技の試合に出たことで体作りを見直せた
――体重もそれほど20代のときから変わっていないように見えます。
永田:一番重いときは110㎏ぐらいあったんですけど、それと比べると落ちました。ピーク時よりは落ちていますけど、今の年齢で動きやすい体ですからこれでいいと思います。
――体重を増やしても動けないと意味がないですからね。
永田:自分の体作りのなかで、一つ大きなターニングポイントがあったんですよ。
――なんでしょうか?
永田:プロレスのトレーニングでバーッと体を大きくして、その後に総合格闘技の試合に出ることになったんです。
――2001年と2003年の大晦日に総合格闘技の試合に出場しましたね。
永田:その試合の前にマルコ・ファス(ブラジルの柔術家、総合格闘家)の道場に練習に行ったんです。そのときに1時間~1時間半くらい、延々とサーキットをやったんです。プロレス向けに体を大きくしていたなかで、まったく違う練習をすることになって、最初は気持ち悪くなりました。でも慣れてきたら何をやっても平気だったんですよね。総合格闘技の試合では負けてしまいましたけど、体作りという部分では、あそこでもう1回自分を見直せたというのは、後々大きかったと思います。
――プロレスと総合格闘技は求められるものが違うので、練習の仕方も当然違います。デビューしてからずっとプロレスの練習をしてきたなかで、総合格闘技の練習をすることによって、気づいたことがあったのですね。
永田:レスリング時代にやっていたことをもう1回思い起こさせてくれた感じですね。プロレスラーになって、レスリングのコンディション作りをして試合に臨むと、力の配分が全然違うのでバテてしまいました。でもキャリアを積んで力の配分がある程度わかるようになってきたときに、もう1回コンディションを作り直したら、無敵だなって思えるぐらい変化がありました。プロレス用で体を作り込んできていて、総合格闘技の練習をすることによって、体が絞れました。意図的に絞ったわけではないですけど、息を上げながら体が絞れたら、コンディションがすごく良くなったんです。そこで、筋トレをしっかりやりながら、サーキットや息上げをしていれば、コンディションを上げられることに気づきました。総合格闘技の練習に限らず、いろいろなトレーニングをやってきたなかで、これはいい効果があった、これはあまり意味がなかった…というように、自分で取捨選択をしながら必要なものを取り入れていったんです。
エアロビ、フラフープ、過去の経験はヒントになる
――永田選手はG1クライマックスの前には、エアロビトレーニングやフラフープ特訓など、いろいろなことをやってきましたが、それらもすべて積み重ねとなっているわけですね。
永田:エアロビクスはけっこうきついんですよ。1時間やったら大変なことになりますよ。エアロビクスというと、マダムとか若い女性がボディをキレイに保つためにやるものだと思っていましたけど、それを保つためにはとてつもない柔軟性とカロリーを使うんです。新聞のネタになるというのもありますけど、やったことがないことをトレーニングに取り入れると、必ずプラスになることがあります。エアロビもフラフープもすごく参考になりました。
――プロレスとは使う筋力や体の動かし方が違うので、プラスになる部分も多い?
永田:そうなんですよ。実はエアロビクスは、ソウルオリンピック前のレスリングの全日本合宿でもやっていたんです。
――レスリングの合宿に取り入れられていたのですか?
永田:そのとき、自分は代表メンバーの練習パートナーとして合宿に参加していたんですけど、夕方のマット練習の前にエアロビクスを1時間やりました。そういう経験もあったから、G1前にエアロビクスをやったら面白いかなと思ったんです。柔軟性もアップするし、息も上がるし。プロレスっていろんな動きをしなければいけない部分があるので、過去にやってきたトレーニングを掘り起こすことで、自分を高めることができるんだなって思いましたね。過去の経験がヒントになるんです。
――日頃運動をする機会がない人は、「きついからトレーニングなんてしたくない」と考えることが多いと思います。そういう方々に永田選手から、トレーニングをすることの魅力をお伝えください。
永田:まず、汗をかくと体が軽くなりますよね。運動をする機会がなくてやらない人は、体がだるかったり、ご飯が美味しくないと思うときもあると思います。そういう日が続いたら、一度、楽なトレーニングでいいので、体を動かして汗をかいてほしいですね。ペットボトルを持ってウォーキングをしてもいいですし、とにかく汗をかいて、柔軟体操をしたら、本当にご飯が美味しく食べられます。美味しくご飯を食べて、美味しいお酒を飲むためにもトレーニングは欠かせません。
――現在、50歳。何年か経ってリングを降りるときが来たとしても、トレーニングや体を動かすことは続けていきますか?
永田:引退しても体は動かすでしょうね。そのほうが体が楽ですし。(プロレスの神様と呼ばれた)カール・ゴッチさんは「人生は死ぬまで動き続けることだ。だからこそ、若者はトレーニングを続けるべきだし、年をとっても絶対やるべきなんだ」と言いましたけど、本当にトレーニングは続けるべきだと思います。きついことをする必要はないので、毎日汗をかく。年をとってもいいコンディションを保つためには、それが一番だと思っています。
新日本プロレス所属。1968年4月24日、千葉県出身。アマチュア時代はグレコローマンレスリングの選手として活躍し、92年に全日本選手権で優勝。その後、新日本プロレスに入門し、92年9月14日、山本広吉戦でデビュー。01年に武藤敬司を破ってG1クライマックス初優勝。02年に安田忠夫からIWGPヘビー級王座を奪取すると、当時の最多防衛記録となる10連続防衛に成功した。現在は全日本プロレスの秋山準とともにアジアタッグ王者に君臨する。