サッカーW杯開催国ロシアに行ってみた




開幕したと思ったら、もう決勝戦直前のサッカーW杯2018年ロシア大会。日本がラウンド16でFIFAランキング4位のベルギーにあと一歩まで迫るなど、好試合が続出。そんな寝不足の日々、試合同様に気になるのは、開催国ロシア国内の様子だ。そこでお届けしたい、VITUP!独自視点のロシア報告を。

世界最大のスポーツイベント、サッカーW杯。開催国ロシアには、世界各国から、熱心なサポーター、ファンが訪れている。試合会場はもちろんのこと、街中からも、熱気が伝わってくる。

会場での観戦にはチケットとともに、W杯専用パスポートのような「ファンID」の取得が必要となる。試合会場都市間の鉄道と、モスクワなどの公共交通機関が無料で利用できるばかりか、博物館などの入場券も割引になる特典も付いてくる。

ヴォルゴグラード駅前の時刻表

他、公式パブリックビューイングの会場や、各種アトラクションが楽しめる「フットボールパーク」が設置されるなど、サッカーファンの受け入れ態勢は、かなり整っている。

赤の広場に設置されたフットボールパーク

こうした“オモテナシ”も然ることながら、開催国が躍進すれば、現地はさらに熱気を帯びる。大会前の評価が決して高くなかったロシアは、開幕戦でサウジアラビアに5対0の圧勝、その勢いのままラウンド16でスペインを破り、ベスト8進出の快進撃を見せた。ファンの盛り上がりという点においては、かなりの成功を収めた大会と言えそうだ。

近年、ロシアのスポーツといえば、ここ数年不調だったサッカーよりも、女子選手のイメージが強いと思われる(最大の話題はドーピング問題かもしれないが)。テニスのアンナ・クルニコワやマリア・シャラポワ、フィギュアスケートのユリア・リプニツカヤやアリーナ・ザギトワらのような、実力と美貌を兼ね備えた選手たちである。

だが、ロシアのスポーツの伝統といえば、旧ソ連時代に培われた、国家を挙げての科学とトレーニングの融合だ。真っ先に思い浮かぶのは、華麗な女子選手の姿よりも、質実剛健な鍛錬である。旧ソ連に対する度が過ぎるステレオタイプは、マシンに頼らずケトルベルを使用、つるはしやハンマーで行う日々の労働で、“同志”諸君の肉体を鍛え上げる、そんな光景だろう。独断と偏見では、レスリング・グレコローマンスタイル130kg級でオリンピック3連覇を達成した“霊長類最強の男”、アレクサンドル・カレリンこそが、ソ連体育の最高傑作だ。

今もあちこちに旧ソ連時代の名残が

そんな妄想を膨らませつつ歩いていると、こんな風景が眼前に広がってきた。

一見、公園の趣だが、そこにあるのは、縦横斜めに走る、鉄の棒の数々。鉄棒に雲梯、名前は不明ながら、鍛えるためだけにあるとしか思えない設備群だ。

日本でも稀に目にするスウェーデン体操の設備。

突拍子もなく転がっているバーベル。

極めつけは、巨大なタイヤ。

これをひっくり返すタイヤフリップのためにあるのか、それとも特大ハンマーで叩くためのものなのか? 辺りにハンマーは見当たらないため、叩いて鍛えるためには、マイハンマーを持参する必要がありそうだ。いずれにせよ、不法投棄の中古タイヤという感じはしない。

別の公園にも行ってみた。すると、タイヤは置かれていないものの、綱と吊り輪があるではないか!

2つの公園が位置するのは、今回のW杯ロシア大会のメイン会場、ルジニキ・スタジアムのすぐそば。そのため、これらはスポーツ施設の一部であり、一般の公園とは異なる特殊なものと思えてきた。

レーニン像そびえ立つルジニキ・スタジアム

だが、そんな夢の無い否定的見解は、日本で言うところのマンション、集合住宅地とおぼしき場所にある、この公園を見てかき消された。

ブランコや砂場があり、明らかに子ども向けの公園だ。だが、ここにも鉄棒、雲梯、吊り輪が並んでいるではないか!

やはり、ロシアの公園とは、肉体鍛錬の場であるらしい。特筆したいのは、転がっていた青いバーベルを除き、各公園の器具が、どれも比較的新しいこと。ロシアは、体操競技や格闘技で輝かしい成績を残して来たが、その伝統を受け継ぐ器具が、新たに身近な場所に設置されているということなのだろう。今大会で躍進したロシアは、近い将来、これらの設備投資の恩恵を受けて、さらなる強豪となるに違いない(?)。

取材&撮影・木村卓二