音楽とスポーツというふたつの世界で一線級の活躍を見せている上原麻衣さん。彼女は音楽ユニット『宵待小町(よいまちこまち)』に所属するプロのフルート奏者でありつつ、第36回全日本ベンチプレス選手権(M1女子57㎏級)で優勝を収めたベンチプレッサーでもある。ギャップ満載の肩書きを持つ上原さんが、そもそもベンチプレスに魅せられたのはなぜだったのか。彼女の歩みに迫った。
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――『筋肉フルート奏者』と名乗られているのですね。良い意味でギャップを感じます。
「ありがとうございます。音楽家とアスリートを並行してやっている方はなかなかお見かけしないので、自分が先駆者になれたらいいなと思いまして、体を張っている感じですね(笑)」
――フルートとベンチプレスはどちらを先に始めましたか?
「フルートのほうが先でしたね。職業としてフルート奏者をする中で、ベンチプレスに関してはそもそも競技があること自体知らなかったです。私の家の近所に、それこそベンチプレスの世界大会やアジア大会に何度も出場して優勝している女性の方がいるんですけど、その方のいるジムに行った時、競技に誘われたのがきっかけでしたね」
――そもそも、ジムに通い始めたきっかけは?
「最初は単にダイエットが目的でした。以前はかなり丸かったので痩せたくて、前述した女性である櫻井美幸さんに相談したら『ウチのジム(PRETTY GUNS)においでよ』って言ってもらったんです。試しにベンチプレスをしてみたら重量が伸びてきて面白くなってきて、ダイエットはそっちのけで競技に熱中するようになりました(笑)。これが2年半前の話ですね」
――フルートとベンチプレスはかなり方向性が違うかと思います。それぞれの魅力についてどのように感じていますか。
「フルートは自分を表現するものであって、『上手い、素敵な演奏』なども第三者からの評価じゃないですか。コンクールやオーディションを何度も受けてきましたけど、それに向けて毎日努力しても必ず結果が返ってくるわけじゃないんですよね。一方で、ベンチプレスは自分が練習すればするほど重量が上がっていく。最初は20㎏しか持てなかったものがだんだん40、50と上がっていって、ついには90㎏近くまで持てるようになったり。努力が数字として目に見えるようになるのが楽しいんです。それでハマっていった感じですね」
――そうして『筋肉フルート奏者』が誕生したわけですね。
「そういうことです(笑)。ベンチプレスとフルートを両立することがメンタル面にもすごくプラスになっています。フルートのほうでも『最近いい演奏するよね』とか、お褒めの言葉をいただけるようになりました」
(次回は、第36回全日本ベンチプレス選手権大会の振り返りについて)
取材・文/森本雄大
写真提供/上原麻衣