インピンジメント症候群の予防について【スペシャリストに訊く・神鳥亮太⑤】




リハビリテーションのスペシャリスト、PT(Physio Therapist:理学療法士)の神鳥亮太さんにお話を伺うこのコーナー。前回、多くのベンチプレス愛好家が抱える悩みの一つ「インピンジメント症候群」の解剖学的解説をしていただいた。今回は、その対策を伺う。

―――インピンジメント症候群の予防に有効な方法があれば、ぜひ教えて下さい。

姿勢を誰かにスマホで写真に撮ってもらい、それをチェックするといいかもしれません。その際、意識して良い姿勢を作るのではなく、普段の姿勢のまま写真を撮ってもらうほうがいいです。そうすることで、横から見て、ちゃんと肩が耳たぶの下にあるのか、チェックできます。自分で鏡を見ようとしても、わからないですからね。

―――その位置関係について、ご説明下さい。

肩甲骨面というものがあります。肩甲骨は、前額面(体の横のライン)に対し、30度前傾しています。その位置が、腕を上げやすい位置です。上腕骨と肩甲骨のラインが一致しているからです。大胸筋が固く、鎖骨と肩鎖関節を介して肩甲骨が外転し前傾するというのは、30度よりも前に出た状態のことです。その状態で腕を上げると、痛みが生じるのです。

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―――背中側のチェックも必要でしょうか?

ベンチプレスをやり込むことによって、肩甲骨を背骨に寄せること(内転)ができなくなる可能性があります。まったくできない人はいないと思いますが、位置が変わっていることがありえます。たとえば、左の肩甲骨だけ外転している(※体の外方向に開いている)可能性もあります。誰かに後ろから確認してもらうといいと思います。

―――一人でできるチェック方法はありますでしょうか?

壁に背を向け、上げた手が壁につくかどうかで、可動域のチェックができます。つかないとしたら、それは相当、可動域が悪いということです。肩関節というのは、一つではなく五つあります。胸椎が伸展しないと、人間の手は180度上がりません。一つの関節だけで腕が180度動くわけではないのです。たとえば、猫背にしたら、腕は絶対に上がりません。胸椎が伸びて、胸郭が広がって、その後ろで肩甲骨が動いて、初めて正常に動くのです。

姿勢の崩れはケガの誘発要因である。ベンチプレスを楽しみ、肩の痛みと無縁の生活を送るため、ここに紹介された方法を実行してみよう。
次回は、多くのベンチプレス愛好家が抱える別の悩み、手首についてお話を伺う。

取材・文/木村卓二