10/21(日)に開催される全日本学生ボディビル選手権大会。史上初の大学1年生チャンピオンの快挙を狙う相澤隼人選手にインタビュー。最終回となる今回は、ウエイトトレーニングへの想いと、戦略を話してもらった。
高まる注目度と
ウエイトトレーニングへの想い
――最近はメディアで取り上げられることも増えてきましたが、注目度が急上昇していることをどう感じていますか。
相澤:見られている分、やっぱりちゃんとやらなきゃなと思いますね。いい意味でのプレッシャーがあります。「ボディビルはこういうものです」というのをしっかり表に出していかなければいけないなと思います。
――相澤選手が入口となって、ボディビルをより世間に広めたい気持ちがあると。
相澤:ボディビルというか、トレーニングを広めたいですね。すごく楽しいですし、他の人にもその楽しさを分かってもらいたいなと思います。どうしてもトレーニングをしてプロテインを飲んでいると言うと、ちょっと変な目で見られることもありますから。
――いまだにありますか。
相澤:慣れてしまえば気にならなくなりますけど、高校生の時は休み時間にプロテインを飲んでいると、「なんだこいつ」みたいな目で見られることもありました。こういう競技をやっているうちは仕方がない部分もありますけど、分かってほしい気持ちもあります。
――現在はボディビルという競技のため、勝つためにトレーニングをされていると思いますが、「楽しい」という感覚はありますか。
相澤:ありますよ。楽しくなかったら続けていないですし、今でも楽しいからトレーニングをやっています。その延長線上にボディビルがあるだけだと思っているので。
――昨年は全国高校生選手権大会、日本ジュニア選手権大会の2冠を獲得し、11月には世界ジュニア選手権大会にも初出場しました。
相澤:世界選手権に出られるだけでうれしかったです。出場したのは僕を含めて9人だったんですけど、他はみんな22、23歳くらいで僕が一番年齢も若くて。75kg以下級だったんですけど、みんな73kgくらいで出ている中で自分だけ68kgだったんです。そうなると筋量的な部分で不利になってくるんですけど、それでもちょうど真ん中の5位と戦えたので、そこに関してはよかったですね。うれしいけど、もっと欲が出てきたかなという感じです。
――今後は一般の大会にも出場していくのでしょうか。
相澤:はい。来年は8月の東京選手権にも出ようと思います。今まで10月だけだったのが2ヵ月早まるので、その分逆算して減量を2ヵ月早めるのか、それともオフシーズンも少し食事に気を遣って、あまり脂肪を乗せないようにするのか。いろいろとやり方があるので、そこはまだ考えている最中です。
――実際にやってみなければ分からない部分もありますよね。
相澤:今の僕くらいの年齢は一番筋量が伸びると思うので、オフもしっかり取りたいんです。一昨年から去年にかけて+3kgでコンディションがよかったので、今年も去年から+3kgくらいでさらにいいコンディションを目指しています。
相澤隼人の戦略
ボディビル大会での闘い方とは!?
――ボディビルの大会は体づくりだけではなくポージングも重要だと思いますが、全体で見た時に勝敗の何割程度を占めると思いますか。
相澤:5割くらいじゃないですか? ポージングはめちゃめちゃ大事です。力が入らなかったら筋肉が出てこないので、その練習もしっかりやらないとダメなんですよ。大会前はほぼ毎日、自宅とかスタジオとかでポージングの練習をしています。
――ポーズはご自身で考えるんですか。
相澤:そうですね。ポージングってやり込めばやり込んだだけうまくなるんですけど、下手なままやり込むと下手なものが定着してしまうので、誰かに見てもらって修正しながらですね。あと、背中のポーズだと自分では見えないので、ここの力が抜けてるよと言われたら意識して何度も練習したり。
――昨年の高校生選手権では、バック・ダブルバイセップスの時に右足を下げてポーズを取り、よりカットが出る左は直後に控えていた日本ジュニア選手権のために温存していたと以前のインタビューで話していました。いろいろな戦略があるんですね。
相澤:自分は右ヒザの靱帯を伸ばしているので、右の内転筋やハムストリングスに力が入りづらいんですよね。それと、股関節が開いているので外側のハムストリングスは筋肉がつくんですけど、内側があまりつかないんです。だけど左に関しては全体的に均一についているので、バックポーズで足を後ろに下げたときは明らかに左のほうがいいですよね。逆にサイドチェストとかサイドポーズの足は、外側が発達している右脚を見せるのがいいのかなと思います。あとはライティングの向きによっても変わってきます。ただ、決勝は自分を一番よく見せたいので、ライティングに関係なく一番得意な動きをします。自分だったら右のサイドチェストですね。ただ、左右の練習はずっとやっています。どちらか片方しかできなくなると、体が歪んでしまってトレーニングにも影響してくるんですよ。こっちは力が入るけど、こっちは全然力が入らないみたいな。
――相澤選手は自信の体を全身のバランスが取れたタイプだと自己分析していましたが、日々のトレーニングでもバランスを意識されているのでしょうか。
相澤:どこだけに特化するというトレーニングはしてこなかったので、それが大きいんじゃないですかね。やっていく中でもうちょっとここが欲しいなというのはありますけど、だからと言ってそこだけトレーニングの頻度を増やしたりはしません。一回のトレーニングの密度を濃くして、どんな種目を取り入れるかを変えていくだけなので。
――今後、どんな体を目指していきますか。
相澤:もっと丸々とした体ですね。バランスが取れていると言っても肩とかはあまり強くないので、もっと食い込む肩というか、もりもりした筋肉をつけたいです。
――やはり理想は鈴木雅選手のような体ですか。
相澤:それもありますけど、自分は自分の体を追求したい気持ちがあります。でも、そもそも自分は雅さんと体のタイプが似ているんですよ。自分でもそう思いますし、雅さん本人からも似てるねと言われます。前肩だったり足がO脚だったり、重心が低いところとかヘソからみぞおちまでの比率とかも。
――あらためて、学生選手権に向けての意気込みを聞かせてください。
相澤:優勝するつもりしかないです。正直、優勝以外は負けだと思っています。
――結果以外で、何かご自身の中にテーマはありますか。
相澤:全体的に大きくするのと、去年の自分よりもいいコンディションで挑みたいです。そんなに絞れなくて優勝したとしても、去年以上じゃないと自分の中で納得がいかないですね。
――対戦相手はいますが、ある意味自分自身が一番の敵なんですね。
相澤:かもしれないですね。勝ちたいというのはありますけど、自分を超えたいというのもあります。結局は毎年同じことをやるだけなので、少しでもよくならないと何のためにやっているのかわからないじゃないですか。去年の自分を超えたいです。
★常に冷静に自分を見つめ、目標に向かって脱皮し続ける相澤隼人。全日本学生ボディビル選手権大会を控え、その表情は自信にみなぎっていた。「理想のカラダ」を目指す相澤隼人は、自分という最大の敵を超えて、大会に臨む。
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取材・文/伊藤翼 撮影/神田勲