鍛え抜かれた身体と、不屈の精神で頂点を目指すパラアスリートを紹介するこのシリーズ。今回は、ウィルチェアーラグビーの島川慎一が登場。マーダーボール(殺人球技)と呼ばれるほど激しい車いす競技を20年近く続ける島川の身体はいかにしてつくられるのか? そのプレー人生とともに探っていく。
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まずは会場に足を運んでプレーを見てほしい
一度見れば、必ずハマる
――ここ数年、東京パラリンピックに向けてウィルチェアーラグビーの注目度も高まってきているように感じます。
島川:本当にそうですよね。東京での開催が決まり、リオ大会でメダルを獲得したあたりから、メディアにも取り上げていただけるようになりましたし、大会に取材に来ていただけるメディアの数も増えてきたと感じます。
――今回の世界選手権でもそう感じましたか?
島川:予選ラウンドから決勝戦までBSでしたが生放送もあったみたいですし、優勝したときにTVでニュース速報のテロップが流れたと聞きました。アテネ大会のときには、ニュースでも映像や写真はなく、結果が文字で少しだけ表示される程度だったので、その頃からすると考えられなかったことです。
――ただ、とはいえまだ観客動員など少し不安なところもあります。
島川:観に来てくださる方が増えてきているのは確かだと思います。でも、これまでのパラリンピックでは会場が満員になったりしていて、東京大会も本当にそうなるのかな……と心配なところはあります。どうやってウィルチェアーラグビーを知ってもらうか?というところに、まだ課題もあると感じています。
――選手としては結果を残すのが一番?
島川:もちろんそうです。結果を残すことで、メディアに取り上げていただける機会も増えるでしょうし、そこからどんどん広まっていくのが一番なのかなって。ただ、競技を見たことがない方には、「こういう競技だよ」といくら口で説明してもイメージが湧かないと思うので、まずは一度会場へ観に来てくれればと思います。一回観た人は、けっこうハマってくれる人が多いんですよ。
――改めてなのですが、ウィルチェアーラグビーの魅力を教えていただけますか。
島川:車いす同士の接触、激しいぶつかり合い、転倒、「ガシャン」という音、スピード感……。うーん、やっぱり、口で説明するより、観に来てくださいという感じです(笑)。音とかとは特にそうですけど、映像ではなく実際に会場に来て、肌で感じていただかないとわからないと思います。
――私も数年前に取材をきっかけにこの競技にハマりましたし、会場では競技の体験会なども実施していることもあり、ただ観戦するだけではない楽しみもあると思います。
島川:会場にはガイドブックが置かれていることもありますし、日本選手権大会(12月14日~16日/千葉ポートアリーナ)のような大きな大会では場内で試合の実況・解説も流れているので、わかりやすいと思います。それを見ていただいたうえで、ボールがないところでの駆け引きや時間の使い方など、戦術などの頭脳プレーがわかってくると面白いと思いますね。
――ハイポインターとローポインターの役割の違いなども。
島川:僕はハイポインターなのでスピード感やパワーなどに注目してほしいですし、逆に障害が重いローポインターの選手はボールのないところで相手をブロックするなどほぼ守備専門のプレーになるので、そういうところにも注目してほしいですね。
★次回は最終回。島川選手の今後について伺っていきます。
取材・文/木村雄大 撮影/安多香子
島川慎一(しまかわ・しんいち)
1975年1月29日、熊本県出身。バークレイズ証券株式会社/BLITZ所属。21歳の時に交通事故により頚髄を損傷し車いすの生活となる。1999年よりウィルチェアーラグビーをはじめ、2001年に日本代表に選出されて以降、アテネ大会から4大会連続でパラリンピック出場。リオ大会では初のメダルとなる3位に輝く。また、埼玉県所沢市を拠点とするチーム・BLITZを2005年に創設(現在の本拠地は東京)。過去、日本選手権大会で8度の優勝を誇る。