スポーツをやってきた人であれば、必ず一度は試合で「自分でも信じられない力」を発揮して、びっくりした経験があるだろう。何度、練習でやっても成功しなかった技が一発で決まったり、いままで出したことのないタイムを記録できたり。観る側の人たちも先日、行なわれた冬季オリンピックやWBCなどで、幾多のミラクルを目撃したばかりのはずである。

「私自身そういう経験はあるし、そういう100%以上の力を出せる瞬間はめちゃくちゃかっこいいですけど、当たり前ですがすごく難しいことだと思っています。もちろん100%で挑みますが、それを超えることは想定に入れていないです」
非常に堅実な考え方だ。ただ、そうなると必然的に力の上限が自分でわかってしまう。それを出し切っても勝てない、とわかったときには観念してしまうのか?
「たしかに上限はあるかもしれないですけど、そこを突破するよりも自分の持っている全てをどう使えば勝てるかを考えています。そして、100%を毎回超え続けることは私にはできないけれど、自分の『できること』の範囲を増やしていくことができると思っています」
100%の力を出せるコンディションを整えても、緊張で力が出し切れないケースもまた、スポーツ選手なら、当然、あるだろう。両国国技館という大会場ともなれば、そんな不安も頭をよぎってしまうが、鈴芽の口からは真逆の言葉が出てきた。
「提供試合で初めて両国国技館で試合をしたとき、緊張しすぎてまったく客席が見えなかったんですよ。客席の記憶がまったくなくて。それじゃもったいないな、と思っていて、東京女子プロレスの両国国技館が決まって絶対に全部見渡すって決めていたんです。ペンライトの光がすごく見えるんですよ。ああ、この光全部いままで先輩方がつなげてきた歴史なんだなと思って、涙が出てきました。
私はものすごく緊張しいだけど、お客さんの人数がたくさんいてくださること自体は緊張につながっていない気がします。会場に来てくださっている方はみんな東京女子プロレスを応援してくれる“仲間”じゃないですか?だから入場直前はものすごく緊張していてみんなのことを見て安心できます」
ペンライトというのは女子プロレスの会場ならではだが、照明などの演出のため、客席が暗転する入場時にはたしかに映えるし、目立つ。両国国技館ではチャレンジャー・鈴芽を勝利へと導く灯がたくさん煌めいてくれるのか?(3月24日、朝7時10分公開の#3に続く)
