世界を股にかける女子レスラー “時差ボケ地獄”を乗り越えるコンディショニング術




現在、世界各地で日本人女子プロレスラーが大活躍している。

野球でいうところのメジャーリーガーが続々と誕生しているような恰好で、WWEやAEWといった世界に名だたる巨大団体と専属契約を結び、多くの選手がタイトル戦線に関わるような大活躍を見せている。その試合の模様は全米のみならず、世界各国で放送されているので、日本にいるとちょっとわかりにくい部分もあるが、世界的な知名度はとんでもないことになっている。これは日本人として非常に誇らしいことである。

【写真】迫力ファイトを見せる山下実優

そんな中、違ったアプローチでワールドワイドに活躍している日本人女子プロレスラーがいる。東京女子プロレス所属の山下実優、だ。

彼女はあくまでも日本を拠点とし、東京女子プロレスでの試合に出場しながら、世界中からのオファーに応えて、様々な国を飛び回っている。アメリカはもちろんのこと、カナダ、イギリス、そしてフランス。ここまで駆け巡っている日本人女子プロレスラーは、過去を紐解いても、なかなかいない。

東京女子プロレスのリーダーを務める山下実優。日本を拠点に世界中を飛び回る彼女ならではの『闘い』とは?

本人はもはや当たり前のように、このハードスケジュールをこなしているが、当然のことながら、当たり前なわけないのである。とにかく気になるのは『時差ボケ』問題。先日、開催された野球のWBCでも侍ジャパンが短期間に長時間移動を強いられるヘヴィーなスケジュールが問題視され、実際、マイアミに移動後の試合で早々に敗退してしまった。少なからず時差ボケと、そこに起因するコンディションの問題が敗退に関わっていると考えられる。

では、山下実優の場合はどうなのか?

「たしかに時差ボケばかりはどうしようもないですよね。基本、フライトのトラブルで試合に間に合わないと困るので、試合の前日までには現地入りするようにしているんですが、ホテルにチェックインしても眠れないし、ジムで汗をかいたりしても、完全に整わないまま、試合に臨むことも多いです。

ただ、スケジュールの都合で、どうしても試合当日に到着することが何回かあって、そのときはもう空港からホテルに寄る余裕もなく試合会場に向かって、そのまま闘ったんですけど、そういうときのほうが時差ボケする暇もないからなのか、逆にいつも通りのコンディションで闘えたりするんですよ」

じつは野球のメジャーリーグでは現在、時差ボケ対策として「移動先に着いたら、すぐに球場に向かい、そのまま練習をする』というのが時差ボケ防止対策として、多くの球団が取り入れている、という。山下はまさにその有効性を実際に体感してきたことになる。もっとも本人も語っていたように、試合に間に合わないと困るので、現実問題としては前日までに入って、時差ボケと闘わなくてはいけないのだが……。

メジャーリーガーであれば、一度、アメリカに行ってしまえば、シーズンが終わるまで、そのまま闘うので、時差ボケ問題に何度も苦しめられることはないのだが、山下の場合、また日本に戻ってきて闘わなくてはいけない。そう、さらなる時差ボケ地獄が襲いかかってくるのだ!

「そっちのほうが大変ですね。私の場合、ちょっと長くて1週間とか、もっと長い時間、時差ボケに苦しんだりします。日本に帰ってきてから、ゆっくり休む時間があれば、少しは解消されるかもしれないですけど、向こうに行っているあいだにできなかった、取材や撮影の仕事をイッキにこなさなくてはいけないので休む時間もないまま、次の試合の日がやってきてしまう、みたいな。時差ボケは完全に克服できないですけど、こういうスケジュールを経験してきたことで、コンディションを“戻す力”はついたと思います」

とはいえ、これを年に数回、繰り広げているのだから、とんでもないハードワーク。そんな海外遠征に慣れている山下でさえも「こんな大変なこと、いままでになかった!」と絶句するような大事件が、この春、アメリカで東京女子プロレスの選手たちに起きていた(中編に続く)。