打撃、レスリング、投げ技、寝技と、多様な攻撃が飛び交う総合格闘技(MMA)。ハードな競技で闘い続けるには、日々のボディケアが必要不可欠だ。今回は女子格闘家の渡辺選手を取材し、彼女の競技人生とケアの取り組みについて聞いた。
柔道家から総合格闘家に転身し、37歳を迎えた現在も現役で活躍している渡辺華奈選手。10代、20代の頃とはコンディショニングへの意識も変わったという。
「いきなり体を動かすとケガにもつながりますし、体も重いです。そういう意味で動的ストレッチを取り入れて、練習前の体にスイッチを入れるような意識でやっています。それをした上で練習後にしっかりケアして、ケガの予防に努めています」

社会人1、2年目で右ヒザの靭帯を断裂した時も、無理に練習を続けたことで復帰が遅れてしまった。年齢を重ねた今、ケガによるタイムロスは命取りになることを渡辺選手は認識している。
「週に1回は治療院に行って、体の硬い部分をほぐしてもらったり、痛い箇所の原因を探ってもらったりします。打撃を受けると打撲で筋肉が硬くなって、それをかばって他の部分に負担がかかっていることもあります。そういう点を含めてケガのリスクを減らしていけたらと思います。柔道をやっていた頃から指の骨折などは当たり前なので、前はケガしても細かく気にしていなかったんですけど、意識が変わりました」

1週間の練習はハードだ。筋力トレーニングや体力強化に加え、組み技、打撃、レスリング、寝技などの対人練習を組み合わせて週6日練習、1日オフを基本としている。
多様な練習をする中で、「打撃の時はラダーなどのステップワークを練習前にやったり、レスリングの時は首を入念にストレッチしたり、筋力トレーニングの時は全身をストレッチしたり、少しずつ変化をつけています」と、内容によってストレッチのアプローチも変えている。
加えて、体の使い方や身体機能を向上させるトレーニングにも取り組む。
「無駄なパワーを使ってしまっている部分があるので、肋骨まわりを引き上げたり、体幹まわりを使えるようにしたりして、無駄な力を省いています。クロスフィットで日本人初のアジアチャンピオンになった真伍さんにトレーニングを見ていただいていて、体幹部の使い方を見直しています」
競技転向を決断してから約8年、総合格闘家として闘い続けている渡辺選手。2017年にDEEP JEWELSでデビューを飾り、以降もRIZINなどで活躍。2020年12月からはアメリカの総合格闘技団体・Bellator(ベラトール)と契約し、2024年4月からは同じくアメリカのPFL(プロフェッショナル・ファイターズ・リーグ)へ主戦場を移した。
今年4月に行なわれた試合では敗北を喫し、現在は黒星が3つ続く我慢の期間となっている。今後の予定は未定だが、少しでも長く現役でいることを大切にしている。
「タイトル獲得を目指して、できるところまでは闘いたいと思っています。今の自分だからできることもたくさんあると思うので、自分が決めた道を行きたいですね。悩みや考えることもいろいろありますけど、結局はたどり着いたところがゴールなのかなと思います。悔いのないようにやり切ります」
渡辺選手はMMAに転身してからの日々を「ボーナスステージ」と表現する。闘い続けることは彼女の人生を豊かにするとともに、多くの人に勇気を与えている。今後も志を叶えるべく、己の体と向き合い挑戦を続けていく。
◆本記事は日本ストレッチング協会 協会誌「CREATIVE STRETCHING」で紹介された内容を再編集したものです。

