ライブ5曲から即プロレス! NGT48・清司麗菜が酷暑のリングで見せた“衝撃デビュー”




プロ野球選手になりたかったら、学生時代から野球に打ちこんでドラフト会議での指名を待つ。Jリーガーを目指すなら、当然ながら小さいころからサッカーに熱中する。プロスポーツ選手への道は、ある程度、限定されているものだ。

しかし、これがプロレスとなるとイッキにルートが拡大する。ウルフアロンに代表されるようにアマチュアスポーツで輝かしい実績を残したアスリートが転身することもあれば、格闘技経験がまったくないまま新弟子として入門し、道場で鍛錬するというケースもある。相撲からの転向組も多いが横綱にまで昇りつめた人は誰も大成しなかった、という厳しい現実も。プロレスに関してはコレという「前歴」の正解はいまだに見つかっていない。

【写真】衝撃のプロレスデビューを見せたNGT48・清司麗菜

そんな中で注目されているのがアイドルからの転身。昨年、男子を含めたすべてのプロレスラーを抑えてプロレス大賞MVPを授賞したスターダムの上谷沙弥はもともと「バイトAKB」 として活動していたアイドル候補生。アイドルとしては夢をつかめなかったが、プロレスラーに転生して大成功。いまではアイドル時代に夢見たテレビ出演もガンガンこなしている。

東京女子プロレスでは元SKE48の荒井優希が最高峰のプリンセス・オブ・プリンセス王座に君臨。荒井がベルトを巻いてから、後楽園ホールは毎回、満員記録を更新しており、チャンピオンとしてファンから絶大な支持を集めている。つまり、現在、日本の女子プロレスのトップはアイドルからの転向組がメジャー2団体で独占していることになる。

この夏、東京女子プロレスが世界最大級のアイドルフェス『TOKYO IDOL FESTIVAL(TIF)』に電撃参戦。フェス会場に開催期間中、リングを常設する、というダイナミックな企画で、荒井優希をはじめとした女子プロレスラーが総出場するだけでなく、TIFに参加しているアイドルたちがあらゆる形でリングに登場する、という華やかさで話題に。特に「プロレスデビュー」と大々的にアナウンスされたNGT48・清司麗菜の試合はファンだけでなく、メディアからも注目された。

ほんの一瞬だけだがチャンピオンになってしまった清司麗菜。ベルトを逆さまに掲げているのはデビュー戦ならではの初々しさ。NGT48のメンバーも『カッコいい!』と祝福(写真提供/東京女子プロレス)

今回の企画は、日本のアイドル文化を海外へと発信するプロジェクト「TIF ASIA TOUR」と東京女子プロレスのコラボレーションとして実現したもの。アイドルとプロレスという日本発のカルチャーをともに海外へ届ける取り組みの一環でもある。

もともとスケートボードで実績があり、圧倒的な体幹と体力を誇る清司。だが、この日は試合に集中することはできず、まずリング上でNGT48のメンバーとしてライブを開催。がっつり5曲を披露したが、リングは野外に置かれているため、おそらく体感温度は50℃近くあるはず。しかもバウンドしてしまうリング上でダンスをするのは、なかなか難しい。すべて持ち歌とはいえ、いつも大人数で披露しているパフォーマンスを6人用に組み換え、さらに4面に観客がいるリング用にフォーメーションも大幅に変更。そんな条件下でライブを敢行するだけで、とんでもなく体力を削られるのに、そのあとにプロレスデビュー戦とは!

試合前にはNGT48として、リング上でライブを披露。真夏の野外ライブでかなり体力を消耗したはずで、試合が不安視されていたが……(写真提供/東京女子プロレス)

正直な話、そこまで期待はしていなかった。たしかにフィジカルエリートであることは間違いないのだが、スケジュールの関係上、道場でリングを使っての練習は本当に数えるほどしかできていない。NGT48は新潟を拠点にしているので、頻繁に道場へ通うのは、なかなか難しい。

本人に話を聞くと「選手の方に指導していただきました。技のかけ方はもちろん、技をかけたあとの間とかも大事なんだな、と感心しました。たしかに練習する時間はあまりなかったんですけど、そこはイメージトレーニングで」と語った。

試合中の間などは、試合を重ねる中で気づき、試合を通じて会得していくもの。それをデビュー前から看破し、イメトレで補填しようとする考え方がすでに「プロレス向き」。しかも、それを見事にリングで表現してみせた。とにかく一度、動きだしたら止まらない。前述したようにリング上は地獄の酷暑である。その環境下で、しかもデビュー戦でここまでできてしまうのは素晴らしい。実況アナが「本当にデビュー戦なのか⁉」と驚きながら絶叫し、リングに立ち会った選手たち(時間差入場バトルロイヤルという試合形式だったので、複数の選手が関わっている)も「想像を遥かに超えていました」と舌を巻いた。まさに「衝撃のデビュー戦」だった。

立体的でスピーディーな攻撃で魅せただけでなく、コブラツイストでグイグイ締めあげる。とてもデビュー戦とは思えぬ逸材ぶりだ(写真提供/東京女子プロレス)

今後のプロレス参戦に関してはまったくの未定だというが、この1試合だけでおしまい、というのはあまりにも惜しい逸材だ。上谷沙弥、荒井優希に続いて、女子プロレス界に革命を起こせるかもしれない、という可能性を残したデビュー戦。アイドルとして鍛えた体力とスタミナ、そして精神力はやっぱりプロレスに向いているようだ。