2019年の立ち上げから成長を続け、日本のクロスフィット競技者たちが目標とする舞台となった「Japan Championship」。主催者の古屋信登(ノブ)さんは、大会について「自分がつくった大会ではない」と語る。多くの仲間に支えられてきた大会を、これからどのように育てていきたいのか。日本のクロスフィット界への思いや、毎年の表彰式で涙を流す理由を聞いた。
日本のクロスフィットをもっと盛り上げていきたい
――ノブさんはHYROXにも関わっています。急成長しているHYROXと比べると、Japan Championshipには手作り感やコミュニティの温かさがあるように感じます。今後、どのような大会を目指していくのでしょうか。
「HYROXは、日本に入ってきた時点ですでにグローバルな仕組みが出来上がっていました。それを日本に持ってきて、多くの一般の方が挑戦できるフィットネスレースとして広がっています。チケットがすぐに売り切れるほど人気があるのも、本当に素晴らしいことだと思います。一方で、Japan Championshipは僕がつくった大会だとは、まったく思っていないんです。クロスフィットのためにと、いろいろな人が応援してくれたり、手伝ってくれたり、『こうしたほうがいいんじゃないか』と意見を出してくれたりして、今の大会になりました。だから、クロスフィットコミュニティがつくってくれた大会だと思っています。
そして、これからも大切にしたいのが、日本のクロスフィットの競技レベルを引き上げることです。2019年に大会を立ち上げたときから、日本の選手たちがもっと高いレベルで競い合い、海外の大会にも挑戦できる環境をつくりたいという思いがありました。実際にこの数年で選手たちのレベルは着実に上がり、アジアの大会でも互角に戦える選手が出てきています。これからは、アジアだけでなく、世界の舞台でも活躍できる選手がもっと増えてほしい。そのために、Japan Championship自体も競技と大会の質を高め、選手たちが目標にできる大会として成長させていきたいと思っています。そして、そうした選手たちの挑戦が、次の世代の目標になり、コミュニティのつながりをさらに強くしていく。そこからクロスフィットに興味を持つ人も増えて、日本全体にもっと広がっていくと信じています。競技レベルの底上げを通じて、日本のクロスフィットをもっと盛り上げていきたいですね」
――今後、規模を大きくしたり、世界基準の大会に近づけたりすることも考えていますか。
「もちろん、国内の選手のレベルが上がっていけば、競技内容も世界のセミファイナルなどに近いレベルにしていく必要があると思います。会場や競技環境も、さらに良いものにしていきたいですね。ただ、規模を大きくすることだけが目的ではありません。毎年、選手やボランティア、観客の皆さんからいただく意見やフィードバックをしっかり受け止めながら、一歩一歩、着実に成長させていきたいと思っています。正直、大会を毎年開催し続けることは簡単ではありません。でも、それだけの価値がある大会だと思っています。
2019年から続けてきて、今では多くの人がこの大会を目標にしてくれたり、開催を楽しみにしてくれたりしています。だからこそ、もう簡単に途絶えさせるわけにはいかない。クロスフィットコミュニティのためにも、この大会を続けていかなければいけないという責任を感じています。これからも皆さんと一緒に、長く愛される大会に育てていきたいですね」

――毎年、最終日の表彰式でノブさんが涙を流す姿が印象的です。あの涙には、どんな思いが込められているのでしょうか。
「毎年いろいろな感情があるんですよ。まずは、今年も無事に大会を開催できたという安堵感ですね。開催までにはいろいろな課題やプレッシャーもあるので、すべてが終わった瞬間に、ようやく肩の荷が下りるような気持ちになります。それに、選手たちがあれだけがんばって、すべてを出し切ってくれたことへの感動もあります。運営チームの皆さんが自分の時間をたくさん使って、一から大会を一緒につくってくれたことへの感謝もあります。ボランティアの皆さんがあれだけ助けてくれたこともそうですし、全国からたくさんの観客が集まってくれているのを見ると、本当にいいコミュニティだなと思うんです。もう、涙が出るポイントが多すぎるんですよ(笑)」
――今年は競技終了後、ボランティアの皆さんが一緒に体を動かして楽しむ場面もあり、とてもいいイベントだと思いました。
「大会運営メンバーともよく話すことですが、やっぱりボランティアの皆さんも、同じチームだと思っています。ジャッジや機材、アスリート担当、受付や会場関連、そして救護など、本当にいろいろな役割の人がいて大会が成り立っています。だからこそ手伝ってもらうだけではなく、その人たち自身にも楽しんでもらいたい。参加して良かったと思える環境をつくりたいというのは、ずっと考えていたことなんです。これまでは会場や時間の制約でなかなかできなかったんですけど、今年は思い切ってチャレンジしてみました。やって良かったと思っています」
――最後に、これからクロスフィットを始める人や、Japan Championshipを目指そうと考えている人にメッセージをお願いします。
「もちろん、最初からJapan Championshipのファイナルを目指す人がたくさんいてくれたらうれしいです。でも、いきなりそこを目指さなくてもいいと思っています。大会には、トレーニングを始めたばかりの人でも体力テストのような感覚で挑戦できるフィットネスカテゴリーも用意しています。まずはフィットネスカテゴリーに出て、次は予選にチャレンジしてみようかなとか。そうやって少しずつ成長していくきっかけとして、この大会を使ってもらえたらうれしいですね。そして、ファイナルを目指せると思えるようになったら、ぜひそこを目標にがんばってもらいたい。これからも、Japan Championshipはクロスフィットに取り組む皆さんが『目指す大会』であり続けたいですね」


