「My Training Life」で登場してもらった南雲美希さん。彼女が通うボクシングジムは日本人初のWBA世界ミドル級王者として君臨した元プロボクサー・竹原慎二が、同じく元ボクシング世界王者の畑山隆則と共同で経営するジムだ。共通の知り合いを介して出会った二人は、一緒にゴルフに行くなど大の仲良し。今回は「My Training Life」で収まりきらなかった、二人の知られざる関係に迫る。
東京都大田区にある竹原慎二&畑山隆則のボクサ・フィットネス・ジムは、元WBA世界ミドル級王者の竹原慎二と元WBA世界スーパーフェザー級・ライト級王者の畑山隆則が共同で経営している。南雲美希さんはここで世界を獲った竹原慎二から、ボクシングの指導を乞う。二人はどのようにして知り合ったのだろうか。
南雲「慎二君と初めて会ったのは、もうかれこれ10年くらい前です。友達の友達が竹原さんのお兄さんだったんですよ(笑)」
竹原「南雲さんの友達のA子ちゃんが広島出身で、兄貴の友達だったんです。その人の紹介で、昔あった新宿のジムにA子ちゃんと一緒に来たのが初めてです」
南雲「最初は慎二さんって呼んでたんですけど、そのA子ちゃんが慎二君って呼ぶので、私も慎二君でいいかなと。一緒にゴルフに行ったり、仲良くしてもらってます」
竹原「まあそんなにたくさん行くわけじゃないですけどね。年に1回くらい、いつも千葉のコースに行くんですけど(笑)」
出会ってから10年。ボクシングを通じて交流を深めてきた二人。南雲さんが初めてマラソンに参加することをきめたとき、真っ先に相談したのは竹原さんだった。
南雲「慎二君に、今度フルマラソン出るんだけどどうしたらいい?って聞いたんです。そうしたら無理だからやめとけって(笑)」
竹原「ハハハ、キツいからやめたほうがいいってアドバイスしたんですよ(笑)。ちゃんとしたアドバイスもしましたよ。持久力をつけるために、縄跳びや、ジョギングや、スパーリングをした方がいいって」
竹原さんも、南雲さんの行動力とバイタリティには驚かされっぱなしだ。
竹原「南雲さんも凄い方ですよ、本当に。全然練習してないのに、マラソンとか平気で行っちゃうんだもん(笑)」
南雲「ちゃんと日々の少しずつの積み重ねがあるんです。フルマラソンの練習はしてなくても、準備はしてますよ(笑)」
竹原「そうですか(笑)。でも、これだけいろいろなレースに参加していて、そのバイタリティや行動力というのは本当に凄いと思いますね」
そんな南雲さんには、竹原さんの言葉で忘れられない一言がある。
南雲「癌が見つかって治療しているときに、『フルマラソンに出る』っていきなり宣言したんです。『わし、5時間絶対に切ってくるから』って。その言葉通り、本当に実行しちゃったんです」
竹原さんは癌を克服し、2017年にホノルルマラソンに参加した。そこで、4時間55分10秒の記録を出し、有言実行した。南雲さんに完走の報告をした際は、「わしが完走したんじゃから、お前も何でもできる。だから頑張れ」と声をかけた。
南雲「ステージ4の癌を治療して、体力も精神力も落ちるじゃないですか。それを克服して、そのあとにフルマラソンを完走するっていうのは、ほとんど奇跡だと思います。宣言通りに実現した竹原さんは、本当に尊敬してますし、今まで竹原さんにいろいろと面倒を見てもらって、本当に良かったなと思いました。精神的にも肉体的にも辛くなったときは、まず竹原さんに相談してます」
竹原「普段はやる気をそぐようなことしか言わないけどね(笑)」
南雲「そうそう。フルマラソンなんて絶対に無理だ。やめろって言ったもんね」
竹原「ハハハ。だって、いいのは最初と最後だけだもん。最初は頑張ろうと思って走るんだけど、20km過ぎると42.1kmぐらいまで苦痛しかないんだもん。20kmまでは余裕なんだけどね」
南雲「余裕ですね」
竹原「遅いからだろ?(笑)」
南雲「そうそう(笑)」
竹原「ハハハ。最後、ゴールが見えちゃえば感動なんだけどね」
取材中も軽口をたたきあってばかりだったが、互いに尊敬しあっているのがよく伝わってきた。これまでチャレンジャーとして様々な不可能に挑戦してきた二人。だからこそお互いに似た部分を感じるのかもしれない。挑戦者である限り、二人のチャレンジは続いていくだろう。
取材・文・撮影/須崎竜太