アスリートから一般のトレーニーまで、それぞれのトレーニングとの向き合い方を紹介する連載「My Training Life」。今回登場するのは、会社経営者として多忙な毎日をおくるなか、トレーニングに汗を流す前田敏幸さん。彼にとってトレーニングの魅力とは一体どのようなところにあるのだろうか。
「去年と同じことをやっていると会社って縮小していくんです。だから毎年、新しく有用なサービスをつくったり、新規顧客を開拓していかなければいけない。一息ついてもまた次のことを考えなければいけないので、“安定”っていうのはなかなか難しいですよね」
前田敏幸さんは38歳にして社会保険労務士法人と行政書士法人を運営し、さらに新しく起こした株式会社でシステム開発を行う。会社の経営についてのシビアな見方から、若手経営者の苦労を垣間見た気がした。
士業界で自身の会社を起こし活躍する前田さんだが、その社会人生活は順風満帆なものではなかった。
「大学時代はかなり遊んでいて、卒業するのに7年もかかったんです。25歳でなんとか一般企業に就職したんですけど、入ってみたら自分の先輩が年下なんですよ(笑)。会社にはなじめず、結局数ヶ月でやめてしまいました。そのあとニートをしていた時期もあったりして、もう一般的なレールには乗れないなと思ったので、学生のときにとっていた資格を生かして、29歳で会社を始めました」
消極的な理由での起業だったが、会社を経営していくことは楽しかった。社会人経験の少なさに不安もあり、無我夢中で働いた。多忙な毎日を送るなかで、前田さんは体調管理の壁にぶつかる。
「会食は多いときで土日含め毎日、しかも一日二件あったりするんです。夜ご飯を二回食べるみたいな感じですよね(笑)。もともとお酒も食べることも好きで、それでもそんなに太らないタイプだったのに、2カ月で19kg体重が増えました」
胃腸炎を何度も患い、尿管結石で入院。一昨年には自転車に乗った際に腰の筋膜を切り、病院に運ばれた。仕事で長時間座り続けたことが原因だった。不調は、見過ごすことができないほどになっていた。
そんななかでも、会社は順調に業績を伸ばし続けた。そして昨年6月、前田さんと会社は大きな転機を迎える。
「上場を視野に、株主をつけて資金調達をしたんです。会社をより大きくしていくことになったときに、経営者の自分がもっと健康管理について向き合わないといけないなと思いました」
一念発起した前田さんは、パーソナルジムに通い始める。さらに会社と自宅近くに店舗のある24時間のジムにも入会し、仕事の合間に汗を流すようになった。
「トレーニングを始めて一番驚いたのは、風邪をひかなくなったことです。周りで風邪をひいた人がではじめたら一番にもらって、そこからよく咳喘息にまでなっていたんですけど、今年の冬は一度もひきませんでした」
それまで食事にも気を遣っていなかったが、ジムで指導を受け、栄養素を意識した食事を心がけるようになった。おかげで会食続きでも体調を崩しにくくなったという。
さらにトレーニングの効果は、仕事にも直接的に影響した。
「トレーニングをするようになって、仕事の作業効率が格段にあがりました。体を動かすことにより、短い時間でも作業がはかどって仕事が早く終わる。空いた時間でまたトレーニングをすることができる。良い循環でまわっていると思います」
定期的に体を動かす習慣ができた前田さんには、これからやってみたいことがたくさんある。
「トレーニングを始めて、キックボクシングや自転車のチームなど、ありがたいことにいろんなお誘いを受けるようになりました。資格の勉強もしていかないといけないのでなかなか大変ですが、やっぱり体を動かすことは楽しいので、なにかしら挑戦していきたいなと思っています」
始めて一年ですでに「トレーニングが生活の一部」という前田さん。会社の経営もトレーニングも、その勢いはとどまるところをしらない。
取材・文/安多香子
★VITUP! アンケート★
【はじめたきっかけ】
会社経営の為、健康維持・体調管理に
【プラスになったこと】
風邪をひかなくなった、体力がついた
【好きな種目と理由】
ベンチプレス
一番やった感が、トレーニングしている感じがあるから
【モチベーションの保ち方】
モチベーションが下がったことは特にない。むしろ体がだるいときなどは行かないといけないという気持ちになる
【やる気が出た一言】
ちょっと筋肉ついた?と何人かに言われたこと。
【トレーニングに求めること】
体調管理
【これからの目標】
ずっとトレーニングを続けること