学生ボディビル、通称・学ボを盛り上げるべくスタートした連載「学ボ応援団(GKB応援団)」。今回、東京大学運動会B&W部(ボディビル&ウェイトリフティング部)から登場するのは、学連理事長も務める久恒歩君(4年)。自身は学生随一のパワーリフターである彼に、歴史ある部の伝統についてちびめがさんが話を聞いた。
週3回の合同練習が部の結束を生み出す
ちびめが 初めてお会いしたときは、本当にパワーやっている子なの?と思うくらい細く見えたのですが、6月にスウェーデンで行なわれた「IPF世界クラシックパワーリフティング選手権大会2019」では59キロ以下級で3位入賞、そしてスクワット(記録:205.0)とトータル(記録;587.5)で日本記録(ノーギア)達成、おめでとうございます。
久恒 ありがとうございます。去年までは学生記録の更新を目標としてきましたが、今回初めて一般記録を更新することができました。
ちびめが この東大B&W部でのトレーニングの成果ですね。今年も新入生が入ってきたと思いますが、部員はどれくらいいるんですか?
久恒 今年は10人くらい入ってくれたので、現在は約35人です。ボディメイク系とパワーリフティングの比率は、パワーのほうが20人くらい、ボディのほうが10人くらいという感じですね。
ちびめが パワーのほうが多いのはちょっと意外です。けっこう頻繁に合同練習を行なっていると聞いたのですが、そうなんですか?
久恒 はい、月水土の週3回、1時間半、、駒場のトレーニング体育館に集まっています。残りの日は自主練習ですが、合同練習については5限の授業が終わってみんなが来やすい時間に設定しているので、基本的には全員出席が義務という形にしています。東大は1,2年が駒場キャンパスで、3,4年が本郷キャンパスで授業なので3,4年生はこの駒場に移動することになりますが、そんなに苦にしていなくて、みんなここで集まるのが好きなのかな?っていう感じはありますね(笑)。
ちびめが これまで、合同練習をここまでやっている大学はいなかったので驚きですが、それが理由で、東大は“継承”がうまいのかなっていう印象はあります。
久恒 ありがとうございます。うちの部は、大学に入るまではトレーニングをしてこなかったという子が多いので、週3回の合同練習でしっかりと先輩が後輩へ、特にビッグスリーのトレーニングを中心に教えていくようにしています。合同練習で集まることで、減量やトレーニングの悩みなどを気軽に先輩に聞ける環境にあると思うので、僕たちは合同練習を大切にしています。
ちびめが 確かに、先輩と後輩の仲もすごく良さそうに見えます。
久恒 それが東大の良さだと思います。だいたい学年に合わせてやることも決まっていて、ボディビルをやるにしろパワーリフティングをやるにしろ、まず1年生はビッグスリーをしっかりとやる。ボディビルなりフィジークをやるとはいえ、重量を扱えないと大きくはなれませんので。だから1年生からボディビルに出る子はほぼいなくて、基礎をやりながらだんだん補助種目もやって、2年生ぐらいから大会に出ていく形でやっています。
ちびめが ということは、入部するときからどっちをやりたいっていう子はあまりいないんですね。
久恒 ほとんどいないですね。最初はみんな、純粋に筋トレをやりたいっていう思いで入ってきて、先輩が大会に出る姿を見て決めていく人が多いと思います。もちろん両方やる人もいます。
ちびめが ちなみに久恒君はパワーの選手ですが、ボディビルに出ようと思ったことは?
久恒 一時期考えたこともあったんですけど、減量によって扱える重量が落ちるのがあんまり好きじゃないんです。僕はとにかく重い物を持ち上げたいという思いがあったので、パワーリフティングのほうが合っているのかなと思います。ただ、ボディを目指して増量したりトレーニングをしたりもやってみたこともあって、その経験がパワーにも活きているなっていうのはあります。だから、両方やってみるのも良いかなとは思います。
東大と言えば伝統のかけ声!
ちびめが ガクボがどんどん注目を集めるなかで、東大B&W部としても何か変化は感じていますか?
久恒 盛り上がりは感じていますが、うちの部としては何かやることが変わるわけではないですし、大きな影響を受けているという感じはありません。でも、うちの部の伝統である「かけ声を出す」というのはこれからも大切にしていきたいと思っています。
ちびめが 確かに、ガクボでもOBの方を見ていても、東大と言えば「かけ声」という印象はあります。そういう部の伝統を引き継ぐ、マニュアル的なものってあったりするんですか?
久恒 明文化されているものは特になくて、本当に代々語り継がれてきたという感じです。たまにOBの方に来ていただいてセミナーみたいな形でやってくれたりするので、そういうところで継承されていったりはしますけど、機密文書みたいなものはあるわけではありません(笑)。トレーニングについては、先ほどお話したように丁寧に手取り足取りやりながら、という感じですね。
ちびめが それこそ、長い間この部が続いている理由の一つですね。
久恒 あと、うちの場合は指導者がいないことを、逆に強みにだと考えるようにしています。指導者がいないぶん、各自が自分でしっかりと考えないといけません。みんな自分で考えて、わからなかったら先輩に聞いてという伝統ができていると思います。
ちびめが ボディにしてもパワーにしても個人競技ですが、そういう部として結束力がすごいなと感じます。声援の大きさも、「自分たちの先輩たちはすごいんだぞ」というのが声になって出てきているんじゃないかと思います。
久恒 この長い歴史のなかで先輩方が結果を残してきているからこそ、自分たちもやってやろうという気持ちになります。自分たちはトレーニングについてあまりわかっていない状態でこの部に入ってくる人が多いので、部の伝統とも言える、代々伝えられてきたトレーニングに関するノウハウがスッと頭に入っていくのかもしれません。先輩たちが身を持って示してくれていることを、継いでいっているという感じです。
★次回も久恒君が登場。学連理事長としての視点からガクボについて伺います。
インタビュー/ちびめが 写真/木村雄大