「病院の選び方」と「理想的なジム」【スペシャリストに訊く・神鳥亮太⑧】




リハビリテーションのスペシャリスト、PT(Physio Therapist:理学療法士)の神鳥亮太さんにお話を伺うこのコーナー。今回のテーマは、「病院の選び方」と「理想的なジム」。病院選びとジム選びのポイントを、PTの立場からの語っていただく。

リハビリテーションのスペシャリスト、PT(Physio Therapist:理学療法士)の神鳥亮太さんにお話を伺うこのコーナー。今回は、PTの視点から見た「病院の選び方」と「理想的なジム」について、ご意見を述べて頂いた。

―――トレーニング中の怪我は、誰の目にも明らかな「他覚症状」よりも、本人にしか分からない「自覚症状」が多いように思います。そのため、まず自分で何とかしようとする人が多数派のようです。

自分で行う対処が、その怪我の原因に合致すれば治ります。ですが、自分で見極められるかというと、難しいでしょう。怪我の対処には、第三者の評価が必要となるのです。怪我をしないことが一番ですが、予防に絶対はありません。怪我をしないようにアプローチすることはできますが、発生してしまったらすぐに医療機関に行くべきです。しかるべき処置を受けないと危険ですし、症状を悪化させかねません。

―――医療機関に行くにあたって、どのようなことに気を付けるべきでしょうか?

まずは専門医を選ぶことです。整形外科を掲げていても、リュウマチなのか、関節なのか、関節でも腰なのか手指なのか、当然のことですが医者個人によって専門は異なります。

―――残念ながら、結局は「安静にして下さい」としか言われないケースもあるように思います(本シリーズ【スペシャリストに訊くVol.7】「『安静にする』は効果的なのか」参照)。

受診の効果がなければ、医療機関を変えるという選択肢もあるかと思います

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―――医療関係者でない場合、ほとんどの人は、あまり病院の情報を持っていないと思います。どのようして情報を得るのがよいでしょうか?

雑誌にランキングが掲載されることがありますが、そうしたことを参考にするもの一つの手だと思います。以前勤務した病院が、全国で9位、東海地区で1位にランキングされたことがあるのですが、それを見てその病院に来る人が増えたことがあります。また、口コミに頼るものよいかと思いますジムに通っている人であれば、トレーナーなど、そのジムのスタッフが持っている情報に頼るのも手段として有効だと思います。

―――情報を持っていないトレーナーもいるように思います。そういう場合は、どう対応すればよいのでしょうか。

残念ながら、勉強している人と、していない人の差はありますね。持っている情報に限らず、指導力の面でも、トレーナーの実力は、ピンからキリまで差があります。スポーツチームで働くS&C(Strength & Conditioning)コーチでも、怪我の発生を「仕方がない」という程度に考えている人もいれば、怪我の原因や予防まで考えている人もいます(本シリーズ【スペシャリストに訊くVol.2】「トレーニングによるケガを防ぐには」参照)。例えば、ベンチプレスなどで痛みが出るのを見て、「止めておきましょう」とか「下手だから」などとしか言わない人もいます。それは、指導力が低いということです。

―――トレーナーの情報や知識は、設備や機材といったハード面とは別の、ソフトの部分でのジムの充実や信頼につながるように思います。PTの立場から見て、どんなことをジムに望まれますか?

怪我の予防にまで気を配るジムというのが理想的ですね。ウォーミングアップであったり、セルフチェックであったりで、「こういうのをやりましょう」などと提案するジムとか。なぜなら、セルフチェックで変わる部分もあるからです。例えば、立位体前屈などで、ハムストリングの固さを自覚できる人は多いですが、肩甲骨の可動性を知っている人は少ないと思います。少しの説明があって、自分でチェックできる環境があれば、それだけでも怪我は減ります。説明を受けることや、自己チェックを行うことなどを、ルール化できればいいと思います。ジムに通う方々も、トレーニングのフォームをきちんと教えてくれるコースを受講するとか、そういうことをして欲しいですね。

取材・文/木村卓二

神鳥亮太(かんどり・りょうた)
理学療法士、日本体育協会公認アスレティックトレーナー。2000年、北里大学医療衛生学部リハビリテーション学科理学療法学専攻を卒業し、理学療法士免許を取得。以後、三菱名古屋病院で膝関節、肩関節疾患などのリハビリテーションを担当。現在はジャパンラグビートップリーグ・豊田自動織機シャトルズのヘッドアスレティックトレーナーを務める。