皆さんは1日どのくらい歩いていますか?
現在はスマホの歩数計アプリを利用すれば、その日に歩いた歩数をカウントしてくれるだけでなく、1週間や1ヵ月単位で一覧表示してくれるので、客観的に運動量を把握することができます。
すでに活用している人であれば、おそらくほとんどの場合、とくにコロナ禍による緊急事態宣言の期間中に限っては、その数値は大幅に減っているのではないでしょうか。歩くのは自宅の中だけ。外出さえしていないのですから、当然と言えば当然です(笑)。
ちなみに私の友人は、以前は1日平均10000歩近く歩いていたのに、自粛生活が始まった3月は5000歩台、4月は4000歩台、5月は3000歩弱にまで落ち込んでしまったそうです。これはまずいと、シューズを新調し、昼休みと仕事終わりにウォーキングを開始し、ようやく6000歩台にまで回復。しかし、1日の理想の歩数は8000歩と言われていますから、もうひと頑張りといったところでしょうか。
一方で、歩数の確保も大事ですが、歩き方はもっと大事。いわゆる歩き方の質にも関心を向けて欲しいな、と私は思っています。
ヒトの歩き方を観察してみると、次の2つは、さまざまな障害を生み出す可能性が潜む未来のリスクが高いタイプと考えています。まず一つが‟猫背ウォーク”(写真1)。そして、もう一つが‟反り腰ウォーク”(写真2)です。
さて、あなたの場合はどうでしょうか?
歩くことは日常生活、あるいは社会生活において必須の移動手段ですから、歩き続ける(いわゆるトレーニングする)ことは、それらの不良姿勢を知らず知らずのうちに日々強化してしまっているということになっているのです。それではウォーキングの本来の価値観は失せてしまい、むしろ本末転倒になり兼ねません。
正しい姿勢で歩いていれば、5年後、10年後には明るい未来が開けていることが想像できますが、そうでない場合には、まさに「雨垂れ石をも穿つ」ということが、より現実味を帯びてくることになるのではないかと思っています。つまり、歩き方次第で前途洋洋にもなれば、前途多難にもなってしまうということです。
もともとヒトのカラダは、前半面にある屈筋が前面にまーるく縮こまる特性を生み出しています。加えて、歩く方向は当然、前へ前へと進むわけですから、よけいに前に縮こまりやすい。言ってみれば、前側から引っ張られるようなイメージです。とくに急いでいるときなどは、はやる気持ちが上体をさらに前かがみにさせているのではないでしょうか。
この‟猫背ウォーク”と‟反り腰ウォーク”、それぞれに至るプロセスには違いがあるものの、実は両者には共通点があります。それは、共にももの前側(大腿四頭筋)を使って歩く日本人特有の習性に起因しているということです。とくに反り腰の人は、ももの前側には常にスイッチが入っている状態。その代償動作として、内またにすることによって、なんとかバランスを保って普通に立ててしまっているのです。
そうではなくて、写真3のように、お尻とももの後ろ側(ハムストリングス)の筋力によって後ろ側から押し出されるような歩き方をすれば、後方の足(つま先離地)はしっかり地面に残ると同時に、膝が伸ばされたままキープできるので上体も起きてくるというわけです。
とはいえ、意識したからと言って、いきなり正しいフォームを遂行できるとは限りません。次回も引き続き、「歩き方」ついて考えてみたいと思います。
山本康子(やまもと・やすこ)
鍼灸師、あん摩マッサージ指圧師、コンディショニングセラピスト。施術キャリアは30年。日本代表チームのトレーナーとしてトップアスリートのボディコンディショニングを手掛けてきた。その間、約6年に渡り外国人トレーナーと共にヨーロッパなど各地を転戦した経験によって、日本にはないスピリットを強く感じ、施術テクニックはもちろんのこと、人として現在もなお進化すべく努力を続けている。2004年に、アー・ドライ治療院、2013年に筋膜リリース専門のスカンディックケアを開業。施術者の育成と労働環境整備にも力を注ぐ。
Scandic care (スカンディックケア)
〒162-0056 東京都新宿区若松町10‐1 YSビル2 F
Tel. 03-3208-2543
Mail:info@scandiccare.jp
営業時間:平日. 11:00 ~ 21:00、土日祝. 11:00 ~ 20:00
公式HP
アー・ドライ治療院(新宿区)
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取材/光成耕司