「猫背」も「反り腰」も肩に特徴が表われる
前回と前々回において、「猫背」と「反り腰」改善・予防のためのエクササイズについて、それぞれ紹介してきました。今回は、どちらにも共通する上肢前面の短縮改善・予防策について考えてみたいと思います。
その前に、コロナ禍の影響によって再びテレワークが推進されていることについて少し触れておきましょう。
つい先日(7/26)、ウイルスの感染者が全国的に増加している現状を踏まえ、各企業が社員のテレワーク率70%を目指すよう近く経済界に要請する考えを明らかにしたばかりです。緊急事態宣言というブレーキをかけたことによって、通勤者は一時2~3割にまで減っていましたが、その解除と同時にGo Toキャンペーンというアクセルを一気に踏み始めたことなどとも相まって、最近は7割程度に戻っているとか。
ところが、それによって再び感染者が増えてくると、2度目のテレワークというブレーキ……。もちろん、感染予防対策として、私もその方針に異論はありません。ただその一方で、テレワークには運動不足を今まで以上に助長させるというリスクも潜んでいることを忘れてはなりません。というのも、通勤という手段は現代人にとって、それなりにではあるけれども、運動不足を解消してくれるよい機会になっているのではないかと思うからです。
「歩き方#1」でも述べた通り、おそらく自粛期間の間は、歩くのは自宅の中だけだったという人も少なくないのではないでしょうか。つまり、美しく歩く以前の問題がここに生じてきているということです。したがって、国民にテレワークを求めるのであれば、同時に運動不足に対する提案、もしくは警鐘を鳴らすべきではないかと思うのですが、いかがでしょうか。
さて、猫背と反り腰の違いについては、これも「歩き方#1」で紹介した通りですが、ここでは上肢にターゲットを絞った観点から話を進めていきたいと思います。
まず、猫背について。
猫背(写真1)は、左右の肩甲骨が上に持ち上げられながら外側にスライドするように引っ張られる(左右の肩甲骨が離れ過ぎる)ことによって背中が丸くなり、同時に頭と首、そして顎が前に出てしまっている状態を言います。
猫背は、運動不足や日々の生活習慣によってジワジワとつくられていくという特徴を持っています。今、PCの前でこの記事を読んでいる方、知らず知らずのうちに、顔を画面に近づけて顎を前に出していませんか? 加えて、両肩が前にググっとせり出していませんか?
一方、反り腰の人の場合は、腰と同時に胸も反っているだろうから、猫背の人とはまるで対照的というイメージを持つかもしれません。が、じつは猫背同様、両肩が内側に入ること(内旋)によって両肩周辺に円背が見てとれるのです。そうすることによって、反り腰とのバランスをとっているのです(写真2)。
ところが、猫背のように背中から肩に至るラインが緩やかなカーブを描いているわけではないので、悪いところがなかなか見えにくい……。
言い換えれば、猫背の人は肩を大きく巻き込んでいるけれど、反り腰の人は肩関節そのものをコンパクトにクルリと巻き込んでおり、なおかつ顎を引くことによってバランスをとっているケースも多いので、一見よい姿勢に見えるけれども、じつは個々に分解していくと突っ込みどころが満載というわけです。
そういう意味では、反り腰タイプは、猫背タイプよりも質(たち)が悪い不良姿勢と言っても過言ではありません。
山本康子(やまもと・やすこ)
鍼灸師、あん摩マッサージ指圧師、コンディショニングセラピスト。施術キャリアは30年。日本代表チームのトレーナーとしてトップアスリートのボディコンディショニングを手掛けてきた。その間、約6年に渡り外国人トレーナーと共にヨーロッパなど各地を転戦した経験によって、日本にはないスピリットを強く感じ、施術テクニックはもちろんのこと、人として現在もなお進化すべく努力を続けている。2004年に、アー・ドライ治療院、2013年に筋膜リリース専門のスカンディックケアを開業。施術者の育成と労働環境整備にも力を注ぐ。
Scandic care (スカンディックケア)
〒162-0056 東京都新宿区若松町10‐1 YSビル2 F
Tel. 03-3208-2543
Mail:info@scandiccare.jp
営業時間:平日. 11:00 ~ 21:00、土日祝. 11:00 ~ 20:00
公式HP
アー・ドライ治療院(新宿区)
ホームページ未公開。2020年3月現在、新規受付はできない状況です。スカンディックケアにお問い合わせください。
取材/光成耕司