小中学生を対象とした子どもたちに施術をしていると、彼ら・彼女たちは様々な反応を見せてくれます。おとなしく受けている子もいれば、くすぐったがってくねくねする子、そわそわして落ち着かない子、疲れていると施術開始からものの数分で眠ってしまう子など、まさに千差万別です。そんな彼ら・彼女たちの様子を見て感じるのは、「皆がんばっているんだな……」という感傷にも似た思いです。
施術というのは、見方を変えれば子どもたちとのスキンシップ。私は施術を通して、今の子どもたちにはこのスキンシップが足りなくなってきているのではないかと感じています。
例えば、親子で触れ合うスポーツ活動の場などもその一環ではないでしょうか。ところが、昨今では子どもも大人もスマホという機器がスキンシップの代役を務めているような気さえするほどで、本来のスキンシップが枯渇することによって、子どもたちの体も徐々に‟乾いた体”になってしまっているのではないか。だからこそ、体にケアという潤いを求めているのではないかと思うのです。
乾いた体は、当然のことながら姿勢にも影響します。親からの相談に「うちの子は落ち着いて机に向かっていられない」という相談を受けることがたびたびあります。もちろん、性格的な面も多分に影響していると思われますが、実は原因はそれだけではなく、背骨が曲がっていたり、体に歪みがあるからこそジッと座っていられない、ということも忘れてはなりません。
現在、学校健診においては、側弯症の検査も実施されています。側弯症は、背骨が左右に弯曲した状態で、背骨自体のねじれを伴うことがあり、思春期の頃よりその変形等の変化は顕著に現われてくるようになります。
子どもの成長スピードはとても速く、半年前に大丈夫と診断されても、半年後に何らかの異常が発症してくる可能性があります。だからこそ、定期的にチェックする必要があります。加えて、子どもの頃から体のケアに努めるということは、まさに体の‟幹”を正しく伸ばしていくというサポートにもなるのです。
現在では、子どもたちが木に登ったり、枝にぶら下がっている外遊びの風景が見られなくなりました。木登りは知らず知らずのうちに体幹や股関節を強化したり、整えてくれる最適の遊びですが、今はなかなかそれができない環境です。そこで、木登りに代わるものとして、私は子どもたちにボルダリングを勧めています。
背中を使い、つま先でグッと踏ん張るので体幹の強化につながり、また脚を大きく開くので股関節の柔軟性を引き出すのにも最適です。ぜひ取り組んでみてはいかがでしょうか。
山本康子(やまもと・やすこ)
鍼灸師、あん摩マッサージ指圧師、コンディショニングセラピスト。施術キャリアは30年。日本代表チームのトレーナーとしてトップアスリートのボディコンディショニングを手掛けてきた。その間、約6年に渡り外国人トレーナーと共にヨーロッパなど各地を転戦した経験によって、日本にはないスピリットを強く感じ、施術テクニックはもちろんのこと、人として現在もなお進化すべく努力を続けている。2004年に、アー・ドライ治療院、2013年に筋膜リリース専門のスカンディックケアを開業。施術者の育成と労働環境整備にも力を注ぐ。
アードライ治療院&スカンディックケア
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取材/光成耕司