サプリメント実践的活用のスペシャリストである桑原弘樹さんが、サプリや栄養や肉体に関する疑問を解決する連載。第102回は、「カタボリック」について詳しく解説します。
■トレーニング直後は糖質を素早く補充する
カタボリックとは日本語にすると「異化」と訳され、筋トレ関連でのカタボリックとは、筋肉の分解を意味するケースが大半です。筋肉は「分解」すなわちカタボリックと、「合成」すなわちアナボリックがつねに繰り返されています。カタボリックは起こしたくないと思ってしまうのが自然な発想でしょうが、じつは体にとって必要なものでもあります。
筋肉はもとより肉体は古くなったタンパク質をしっかりと分解して、新しいタンパク質をつくっていくという連続で成り立っているからです。つまりカタボリックとアナボリックのバランスが重要なのです。
ところが筋肉においては、単純にふたつの綱引きの力関係を見た場合には、どうしてもカタボリックのほうが強い状態にあるため、アンチカタボリック(抗異化作用)に力を入れていかないとアナボリックが起こりにくいのです。人間の長い歴史の中では飢餓が大きなウエイトを占めていて、エネルギーコストの高い筋肉は必要以上には必要としないからなのかもしれません。
長時間のトレーニングや空腹といった状態はカタボリックが起こりやすい状態であり、これが強すぎると筋肉は大きくなっていってくれません。つまりアナボリックを目指すのであれば、その手前でまずはアンチカタボリックなのです。
ちなみにアンチカタボリックに効果があるものとしては、BCAAやグルタミンといったアミノ酸がありますが、それ以上に効果的なのが糖質です。トレーニング中はどんどんとエネルギーを消費していきますからアナボリックは起こりにくく、カタボリックが優位な状態が続きます。そしてトレーニングが終わった時点から、一気にアナボリックの反転攻勢がスタートし始めます。そこでトレーニング直後にカタボリックを素早く抑制して、アナボリック効果を早く発揮させるためにも、糖質を素早く補充することが重要となります。
桑原弘樹(くわばら・ひろき)
1961年4月6日生まれ。1984年立教大学を卒業後、江崎グリコ株式会社に入社。開発、経営企画などを経て、サプリメント事業を立ち上げ、16年以上にわたってスポーツサプリメントの企画・開発に携わる。現在は桑原塾を主宰。NESTA JAPAN(全米エクササイズ&スポーツトレーナー協会 日本支部)のPDA(プログラム開発担当)。また、国内外で活躍する数多くのトップアスリートに対して、サプリメント活用を取り入れた独自のコンディショニング指導を行ない、Tarzan(マガジンハウス)など各種スポーツ誌の企画監修や執筆、幅広いテーマでの講演会など多方面で活躍中。著書に「サプリメントまるわかり大事典」(ベースボールマガジン社)、「私は15キロ痩せるのも太るのも簡単だ!クワバラ式体重管理メソッド」(講談社)、「サプリメント健康バイブル」(学研)などがある。プロフィール写真のタンクトップにある300/365の文字は、年間365日あるうち300回のワークアウトを推奨した活動の総称となっている。300日ではなく300回であることがポイントで、1日2回のワークアウトでも可。決して低くはないハードルだが、あえて高めの目標設定をすることで肉体の進化が約束されると桑原塾は考え、実践している。