サプリメント実践的活用のスペシャリストである桑原弘樹さんが、サプリや栄養や肉体に関する疑問を解決する連載。第104回は、精神面の浮き沈みによって筋肉のつき方は変わるのか?という疑問について。
■「ストレスホルモン」は筋肉の成長を妨げる
大いに影響するのではないでしょうか。単純に気分が乗っている時は、集中力もあってトレ強度も上がります。逆に何か悩みごとがある時は、明らかにトレ強度は落ちてしまいます。
悩んだりすることで最初にダメージを受ける臓器は、胃です。胃の機能が落ちるということは、すなわち栄養を取り入れる精度が落ちることでもありますから、筋肉への影響は必至と言えます。
また緊張をしたりストレスがかかると、唾液の分泌量が落ちていきます。唾液は消化の第一歩という役割と、抗菌物質の宝庫でもあります。つまり自然免疫を維持するという側面もあるため、トレーニングによって短期的に免疫が落ちていくシーンにおいても重要です。
そして何と言ってもメンタル的に落ち込むことで分泌されるコルチゾールが、筋肉の成長にとっては大敵です。コルチゾールはストレスがかかると分泌されるため、ストレスホルモンなどとも呼ばれます。副腎皮質から分泌され、糖新生やタンパク質代謝の調整、脂肪の分解、抗炎症などさまざまな役割を持つ必須なホルモンです。ただし、これが長期間にわたって大量に分泌され続ける場合には、その弊害が大きくなってしまいます。筋肉に関しては、分解を促進させてしまうという弊害が出てきます。
悩みがある時はお酒に走るという方もいると思いますが、お酒のデメリットのひとつとしてこのコルチゾールが増えることが言われていて、お酒は筋肉にとってWでマイナスと言えます。昔、故マッスル北村さんは、ゴキブリすら殺すことなく逃がしてあげたという逸話を聞いたことがあります。怒りや憎しみといった感情からはコルチゾールが分泌され筋肉の成長にマイナスだから、つねに心を穏やかにして自分に克つことだけを心がけていたという、まさに伝説のボディビルダーですね。
桑原弘樹(くわばら・ひろき)
1961年4月6日生まれ。1984年立教大学を卒業後、江崎グリコ株式会社に入社。開発、経営企画などを経て、サプリメント事業を立ち上げ、16年以上にわたってスポーツサプリメントの企画・開発に携わる。現在は桑原塾を主宰。NESTA JAPAN(全米エクササイズ&スポーツトレーナー協会 日本支部)のPDA(プログラム開発担当)。また、国内外で活躍する数多くのトップアスリートに対して、サプリメント活用を取り入れた独自のコンディショニング指導を行ない、Tarzan(マガジンハウス)など各種スポーツ誌の企画監修や執筆、幅広いテーマでの講演会など多方面で活躍中。著書に「サプリメントまるわかり大事典」(ベースボールマガジン社)、「私は15キロ痩せるのも太るのも簡単だ!クワバラ式体重管理メソッド」(講談社)、「サプリメント健康バイブル」(学研)などがある。プロフィール写真のタンクトップにある300/365の文字は、年間365日あるうち300回のワークアウトを推奨した活動の総称となっている。300日ではなく300回であることがポイントで、1日2回のワークアウトでも可。決して低くはないハードルだが、あえて高めの目標設定をすることで肉体の進化が約束されると桑原塾は考え、実践している。