連載第16回でも書いたように、ゴールドジムの浦安店、東陽町スーパーセンターに行ったときは、バトルロープをやっています。あまり利用している人がいないこともあって、一人でバトルロープを振っていると、ガン見されることもしばしば。たまにやっている人がいるなと思って見てみると、自分の兄だったなんてこともあります(笑)。
バトルロープをやるようになったきっかけは柔道時代。大学時代も実業団時代も道場にあって、柔道部ではそれをやるのが当たり前だったので、自然とやるようになりました。柔道だけでなく、レスリングの選手でも取り入れている人が多いと思いますし、組み技競技向きのトレーニングなのかなと思います。構えの姿勢、組みながら動くという部分でも、競技とリンクしやすい部分があります。
バトルロープのよいところは、まず全身を使うこと。ロープを振る腕だけでなく、背中、足腰にも負荷がかかります。そして何回も振り続けていると、息が切れて心拍数が上がるので、心肺機能の強化にもなります。また、動かし続けることで、筋持久力アップの効果も期待できると思います。
自分のやり方は30秒振って少し休んでまた30秒振ってというのを10セット。あるいはサーキットの1種目として取り入れて息を上げながらやるというパターンもあります。これはメッチャきついです。他にもやり方はいろいろあって、脚は動かさずに手だけでバーッと振ったり、あるいは全身を大きく使って振ったり、ロープも重さや太さが違うものがあるので、狙いによって使い分けもできます。手だけで振る場合は、太すぎるとなかなか扱えないので細いロープでスピードを重視。太くて重いロープを使うのは、全身を使って振るときです。
柔道にはスピード打ち込みという、バーッと息を上げていく練習があります。バトルロープはそれと似たような効果があるかなと思います。単純な息上げを目的とした場合は、パワーマックスやエルゴメーター、階段ダッシュなどをやっています。バトルロープは息上げ効果に加えて、全身を使うので筋持久力を高めるにも有効です。組み技競技の試合では腕が張りますし、息も上がります。心肺機能や筋持久力は試合では絶対に大事になってきます。
4月のベラトールでの試合でも、1ラウンドが終わった時点でかなり腕が張っていました。試合中はなかなか回復しないので、「まぁいいか」と、あまり気にしないようにして闘っていたのですが、始まってしまえばなんとかなるものです。ただ、試合できつくなったときに踏ん張れる力というのは、普段の練習で追い込んでつけていくしかありません。
持久系のトレーニングはスタミナをつけるという狙いもありますが、それ以上に気持ちを鍛えるという部分が大きいと思います。きついところから踏ん張らないといけない場面は試合で絶対にあるので、日頃からそれをやっておく。効率的な練習はもちろん大事ですが、同様にこういう気持ちを鍛える練習も必要です。
自分のファイトスタイルは、切られても切られても組みにいって倒すという感じなので、相当疲れます。全力でテイクダウンを取りにいって倒せなかったときの絶望感はハンパないです(苦笑)。試合では何が起こるからわからないからこそ、何が起きてもいいように準備しておくことが何より大事だと思います。
バトルロープに話を戻しましょう。読者の方の中には、「バトルロープをやりたいけど通っているジムでできる環境がない」という方もいると思います。そういう場合は、軽い重量でハイクリーンをやるのがいいかもしれません。パワー系のトレーニングのように1回、1回しっかりやるというよりは、軽い重量でリズムよく速くやるようにすると、似たような効果が得られると思うので、ぜひ試してみてください。
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渡辺華奈(わたなべ・かな)
1988年8月21日、東京都出身。7歳から柔道を始め、高校ではインターハイ2位、アジアジュニア優勝などの実績を残し、東海大進学後、1年時に全日本ジュニア優勝を飾る。卒業後、JR東日本へ入社し、オリンピックを目指して競技を続けた。2017年に同社を退社し、格闘家に転身。同年12月3日にデビューを勝利で飾ると29日にはRIZIN初参戦で実力者杉山しずかに勝利。MMAデビューから無敗の快進撃を続けている。2021年よりアメリカ格闘技団体「ベラトール」に参戦している。所属はFIGHTER’S FLOW