サプリメント実践的活用のスペシャリストである桑原弘樹さんが、サプリや栄養や肉体に関する疑問を解決する連載。第107回は、トレーニングをサポートするサプリメントとして真っ先に名前が挙がるクレアチンを解説。
■栄養的な価値はないが機能については力を発揮
クレアチンは一言で表現するならば、アミノ酸の一種ということになるでしょうか。「一種」とつけ足すのは、体をつくる材料となるアミノ酸ではないからです。ただし、構造内にアミノ基(-NH2)もカルボキシル基(-COOH)も含まれていますから、分類として定義上はアミノ酸の仲間という位置づけになります。
体をつくっていないということは、栄養的な価値はほとんどないに等しいのですが、逆に機能については非常に大きな力を発揮します。体内においてATP(アデノシン三リン酸)の再合成を最も素早く行なう役割を担っていて、つまりマックスの力を発揮した後、ふたたびそれに近い力を発揮する際にクレアチンが利用されているのです。
ATPはエネルギー通貨などと呼ばれ、このATPがADP(アデノシン二リン酸)へと変わる際にエネルギーが発揮されます。そしてADPをATPに戻すのがエネルギー産生ということになるのですが、最も多くのATPがつくられるのがミトコンドリア内で酸素を利用して再合成する場合で、その手前では解糖系という場所で無酸素でATPがつくられています。
さらに、その手前のクレアチンリン酸系と呼ばれる場所でもATPがつくられていますが、その際にADPを素早くATPに戻してくれるのがクレアチンです。クレアチンは体内では過半数以上がクレアチンリン酸として存在して、そのクレアチンリン酸がADPにリン酸を渡すことで、素早くATPがつくられるのです。
しかし、これはせいぜい数秒といった短い時間のみの反応ですから、競技でいえば100mスプリンターのような競技になります。このように栄養としての価値はないものの、機能を持ったサプリメントをエルゴジェニックエイドなどと呼んだりしています。摂取タイミングについてはローディング(体内に備わっているクレアチンタンクを満杯にして、あらかじめクレアチンの血中濃度を高めておくこと)をするか否かにもよりますが、仮にメンテナンスに入った状態であれば食後やトレーニング後に一日一回でいいでしょう。
桑原弘樹(くわばら・ひろき)
1961年4月6日生まれ。1984年立教大学を卒業後、江崎グリコ株式会社に入社。開発、経営企画などを経て、サプリメント事業を立ち上げ、16年以上にわたってスポーツサプリメントの企画・開発に携わる。現在は桑原塾を主宰。NESTA JAPAN(全米エクササイズ&スポーツトレーナー協会 日本支部)のPDA(プログラム開発担当)。また、国内外で活躍する数多くのトップアスリートに対して、サプリメント活用を取り入れた独自のコンディショニング指導を行ない、Tarzan(マガジンハウス)など各種スポーツ誌の企画監修や執筆、幅広いテーマでの講演会など多方面で活躍中。著書に「サプリメントまるわかり大事典」(ベースボールマガジン社)、「私は15キロ痩せるのも太るのも簡単だ!クワバラ式体重管理メソッド」(講談社)、「サプリメント健康バイブル」(学研)などがある。プロフィール写真のタンクトップにある300/365の文字は、年間365日あるうち300回のワークアウトを推奨した活動の総称となっている。300日ではなく300回であることがポイントで、1日2回のワークアウトでも可。決して低くはないハードルだが、あえて高めの目標設定をすることで肉体の進化が約束されると桑原塾は考え、実践している。