サプリメント実践的活用のスペシャリストである桑原弘樹さんが、サプリや栄養や肉体に関する疑問を解決する連載。第140回は、赤身肉などに多く含まれるカルニチンについて。
■脂肪酸をミトコンドリア内に運ぶ働きを担う
L-カルニチンはアミノ酸の一種で、生体内ではリジンとメチオニンから合成されるアミノ酸です。ヒトでは生体内に通常、20,000mgが蓄えられているとされていて、およそ70mgが1日に消費されていると言われています。そしてそれを補うために、私たちの体内ではL-カルニチン約20mgを生合成し、別途50mgを食事から摂取しています。
ちなみにL-カルニチンは赤身の肉に多く含まれており、とくに羊肉に多く含有されています。大のジンギスカン好きな知人がいるのですが、決してスリムとは言えないその知人が体型を気にしながらもジンギスカンだけは胸を張って食べに行く理由は、ジンギスカンに使用する肉が羊だからということでした。サプリメントにはまったく関心がない人なので、カルニチンという素材までは理解していないものの、ジンギスカン=羊肉は太らないというちょっとした話題になっているようです(毎度の話となりますが、カルニチンが羊肉に豊富なのは事実ですが、カロリーオーバー分は当然太ります)。
このL-カルニチンというアミノ酸はタンパク質を構成するアミノ酸ではありませんが、生体内で脂肪酸をミトコンドリア内に運ぶ担体という非常に大切な役割を担っています。通常、体脂肪は運動などの刺激により脂肪細胞の脂肪が脂肪酸に変換され、その脂肪酸は細胞内に存在するミトコンドリアと呼ばれる場所で燃焼されてエネルギーに変換されます。しかしこのミトコンドリアは細胞内に存在するものの独立した核を持つ生命体であるため、ミトコンドリアの中に何でも入ることができるというわけではありません。
脂肪酸はそのままではミトコンドリアの膜を通過することができません。L-カルニチンは脂肪酸(脂肪酸が変換したアシルCoA)と結合して、ミトコンドリア内に脂肪酸を通過させる働きがあります。機械に例えて言うと、ガソリン(脂肪酸)をエンジン部分(ミトコンドリア)まで運ぶ輸送体(L-カルニチン)ということになります。
L-カルニチンは日本では2002年12月より食品への使用が認可されましたが、それまでは医薬品としての使用もなされており、さまざまな生理作用が報告されています。その一番大きなものは上述の理由などから、①ウエイトコントロール(ダイエット)でした。しかしその他にも、②運動能力の向上、③運動中の疲労回復、④慢性疲労性症候群の改善、⑤心臓血管系の維持、などの生理作用の報告があります。
桑原弘樹(くわばら・ひろき)
1961年4月6日生まれ。1984年立教大学を卒業後、江崎グリコ株式会社に入社。開発、経営企画などを経て、サプリメント事業を立ち上げ、16年以上にわたってスポーツサプリメントの企画・開発に携わる。現在は桑原塾を主宰。NESTA JAPAN(全米エクササイズ&スポーツトレーナー協会 日本支部)のPDA(プログラム開発担当)。また、国内外で活躍する数多くのトップアスリートに対して、サプリメント活用を取り入れた独自のコンディショニング指導を行ない、Tarzan(マガジンハウス)など各種スポーツ誌の企画監修や執筆、幅広いテーマでの講演会など多方面で活躍中。著書に「サプリメントまるわかり大事典」(ベースボールマガジン社)、「私は15キロ痩せるのも太るのも簡単だ!クワバラ式体重管理メソッド」(講談社)、「サプリメント健康バイブル」(学研)などがある。プロフィール写真のタンクトップにある300/365の文字は、年間365日あるうち300回のワークアウトを推奨した活動の総称となっている。300日ではなく300回であることがポイントで、1日2回のワークアウトでも可。決して低くはないハードルだが、あえて高めの目標設定をすることで肉体の進化が約束されると桑原塾は考え、実践している。