【渡辺華奈のデートするならジムがいい 第29回】合宿よりジャングルを選ぶ




少し時間が経ってしまいましたが、東京2020オリンピックでの柔道日本代表チームは、本当に素晴らしい活躍でした。選手たちの活躍は嬉しく、テンションが上がって見ていましたが、自分も柔道でオリンピックを目指していたので、やっぱり羨ましいなと思いました。トップで闘っている選手は、本当にすごいです!

 

というわけで、今回は柔道時代の話を紹介したいと思います。柔道時代の写真もちょいちょい載せちゃいます。

帯の位置が高くて弱そうと言われていました

 

思い出に残っていることといえば、とにかく練習がきつかったことです。代表の合宿に呼ばれるときは茶封筒が届きます。これは自分たちにとって戦時中の赤紙みたいなもので、茶封筒を見ると「うわー来た!」という感じでした。代表の合宿は毎回、物すごくハードなものだったのです。

 

 

7時からの朝練がラントレになります。基本は400m走で決められたタイム内に走ります。1本走ったら1分休憩。休憩の間は腕立て伏せをします(休憩じゃない!)。そしてまた400mを走って1分休憩(腕立て伏せ=休憩じゃない!!)を繰り返して、最後は800m走というのを5セットくらい。走りの設定タイムを切らないと終わりません。設定タイムは誰か一人でもクリアできないと、連帯責任になるので全員がやり直し。なので失敗できないと思って必死でした。

 

朝練の後、10時からは補強です。いろいろな補強トレーニングをやった後に、寝技の勝ち抜け戦をやります。ラントレと同じく、これも終わりません。寝技で8人抜いて、最後は8人抜いた者同士で闘って勝ったら終わりというルールです。負けるとマイナスになるので、一度負けると9人抜かなければいけなくなります。みんなが代表合宿に来るレベルの選手なので、勝ち抜くのは困難……というか、終わらないんです(涙)。

 

終わらないと言っても、昼食の時間もあるし、午後の練習の準備もあるし、12時半くらいには終わるだろうと思っていたら、13時半くらいまで延々と続いたときもありました。午後の練習は15時からなので、休む時間がない! 結局、勝ち抜けなかった人はロープ15本登ってようやく終わりになりました。

 

午後の練習は乱取りで7分、10分、15分……と、こっちもやたらと長い! とにかく全部の練習が長いんです。今の代表チームは効率的な練習をしていると思いますが、自分が代表に行っていた時代は、めちゃくちゃ根性寄りの練習でした。

 

NTCの合宿に加えて、なぜか毎年釧路での合宿も行なわれていて、こっちもかなりきつかった思い出があります。釧路合宿はホテルに宿泊して、バスで練習場所に向かうというスタイルでした。ホテルの洗濯機と乾燥機は代表選手しか使えなかったため、自分たちは遠いコインランドリーまで行かなければいけません。練習もきつい上に遠くまで洗濯に行くと休み時間が短くなるので、本当に嫌でした。

 

釧路合宿の終盤、コインランドリーで洗濯を待っている時間にみんなでこんな話をしたことがあります。

 

「もう1回この合宿を1日目からやるか、アマゾンのジャングルに放り出されるか、どっちか選べと言われたらどっちを選ぶ?」という究極の選択です。

 

これに対する答えは全員が同じで、「ジャングルに行く」でした(笑)。

 

今回はきつい練習の話ばかりになってしまいましたが、柔道の話は本当にいろいろあるので、また別の機会に別の話も紹介したいと思います。

 

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渡辺華奈(わたなべ・かな)
1988年8月21日、東京都出身。7歳から柔道を始め、高校ではインターハイ2位、アジアジュニア優勝などの実績を残し、東海大進学後、1年時に全日本ジュニア優勝を飾る。卒業後、JR東日本へ入社し、オリンピックを目指して競技を続けた。2017年に同社を退社し、格闘家に転身。同年12月3日にデビューを勝利で飾ると29日にはRIZIN初参戦で実力者杉山しずかに勝利。2021年よりアメリカ格闘技団体「ベラトール」に参戦している。所属はFIGHTER’S FLOW