「パーソナルトレーナー」「パーソナルトレーニング」という言葉がトレーニングの現場で聞かれるようになったのは1990年代の後半あたりからだろうか。アメリカに本部を置く老舗のパーソナルトレーナー資格認定団体、NSCAの日本支部が設立されたのが1991年。1993年に実施された最初の認定試験(NSCA-CSCS)は英語で行われ、日本語での試験(NSCA-CPT)が実施されるようになったのは1995年から。
そのころは「パーソナルトレーナー」なる単語自体がまだ浸透していない時代で、クライアントさんを1対1で指導する「パーソナルトレーニング」なるものも職種として確立されてはいなかった。フィットネス施設でパーソナルトレーナーさんの姿をよく見かけるようになったのは今世紀に入って以降。その数が目に見えて増えてきたのはここ5年くらいか。某大手ジムのCMによる影響が大きいと思われる。
髙田一也さんと有馬康泰さんは、トレーニングを指導してもらい、その対価としてお金を支払うことが当たり前ではなかった時代から活躍している、業界のパイオニアとも言えるパーソナルトレーナーである。その存在は、「水を買う」ことが一般的ではなかった時代に良質なミネラルウォーターを追求していた人たち、と言い換えれば伝わりやすいか。
そんなパーソナルトレーニングが一般的ではなかった時代に磨かれたのが、トレーナーとしてのプロの姿勢だった。連載「マッスルラウンジ」で6週に渡って掲載された2人の対談には、これまでの経験のなかで培われてきた含蓄のある台詞が随所に散りばめられていた。
「人間性とか、生き方を通してクライアント様にどれだけ影響を与え、わかってもらうことができるか」(髙田)
「自分を知っていただき相手を理解することで その人に合った処方箋を出すことができ、信頼を築きあげていける」(有馬)
「もし自分が失敗をしたり、手本を見せられなかったりしたら、それは指導者である自分の責任」(髙田)
「お客様をどれだけ知り、どれだけ思いやることができるかは指導者にとって必要不可欠なこと」(有馬)
こういった考え方やスタンスは、おそらくはどの職業にも通じることなのだろう。プロとしての指導者の在り方。これは、トレーナー数が増加している今だからこそ必要とされるものなのかもしれない。