近年は多くの識者がさまざまなメディアでトレーニング情報を発信し、「いったいどれを参考にすればいいんだ、何が正解なんだ」とトレーニーたちが頭を悩ませがちである。そのような中、個々の身体特性を引き出す「4スタンス理論」をベースに指導にあたっているのが、元パワーリフティング世界チャンピオン・三土手大介さんだ。第3回は、4スタンス理論を学んだうえでのトレーニングの注意点について。
よくある勘違い。重心と体重は違う
――vol.1では4スタンス理論がどういうものかを解説いただきました。ただ、理論を知った方で、誤解や勘違いをされてトレーニングに取り入れている方もいるのではないかと思いますが、いかがですか。
三土手 これは廣戸先生も含めて4スタンス理論を学んだことがある人は皆さんが言うことですが、例えば自分のタイプが4タイプのどれかがわかっているからといって、同じタイプの人を真似しても意味がないということです。結局のところ、自分自身の体がまず正しく動くためのセッティングができなければ駄目ですし、それがおろそかになった中で自分のタイプの動きをしたとしても、使えるものにはならないというところです。
――4つに分類されるのは確かだけど、誰かの真似ではなく、あくまで自分にとって最適なものを見つけないといけないと。
三土手 そうです。私の経験上、「4タイプのどこかに自分のフォームを当てはめたら何かいいことがある」と勘違いされる方もいます。そういうことではなく、「自分の体を正しく使えたのであれば、4タイプのどこかに入る」というのが4スタンス理論なんですね。これを知ることで、やってはいけない動きが明確にわかり、方向づけができるということです。
――他にも勘違いされる事例はありますか。
三土手 「重心」という言葉が4スタンス理論には常に出てきますが、それを聞いて、そこに体重をかけないといけないという勘違いです。例えばつま先側・内側重心のA1タイプの人は、スクワットのときにそこで踏ん張らなくてはいけないという誤解が生まれています。そうなってしまうと、例えば体が水に浮いている水泳選手には適用できない話になってしまいますし、足の不自由な方はどうするんだという話になってきます。
――重心が落ちる場所と、体重がかかる場所は異なることだと。
三土手 そうです。そこに重心がある人は、体の設定としてこうですよという理論であって、どこで踏ん張るかという単純なことではありません。これは4スタンス理論におけるよくある勘違いで、ネットやSNS上でも、「自分はBタイプだから、かかとで踏ん張ったほうがいい」という話をよく見かけますね。