近年は多くの識者がさまざまなメディアでトレーニング情報を発信し、「いったいどれを参考にすればいいんだ、何が正解なんだ」とトレーニーたちが頭を悩ませがちである。そのような中、個々の身体特性を引き出す「4スタンス理論」をベースに指導にあたっているのが、元パワーリフティング世界チャンピオン・三土手大介さんだ。実践編の2つ目は、スクワットを4スタンス理論の視点から解説してもらった。
作り込まない、自然なフォームで
脚トレの王道ともいえるスクワット。ただその解説に入る前に、トレーニング全般に言える共通点として、不安定な体の状態から入らないこと、そして「正しく立つ」ことの重要性を強調します。
「人間の体の中で大切な場所、足の裏(土踏まず)でつくったアーチの上に垂直に脳が乗って立っている状態、これを4スタンス理論では『トップオンドーム』と言います。この状態ができ、その中に自分の骨格が柔らかく収まってくると、深呼吸もしやすく、足で地面を水平に踏むことができます」
そこからラックの中に入っていざスクワット……ではなく、まずはバーベルを担がずにフォームを確認。「スクワットのフォームをイメージしすぎずに、しゃがみやすいと思う橋幅に開いてから、足元にある物を拾う感覚でしゃがんでいきましょう」と、自然にしゃがむ動作から入って、フォームをつくっていきます。そこで自分がやりやすい形を確認してから、ラックに入ってバーベルを担いでいくのです。
「A1タイプの中野さん(モデル)は股関節、特に仙骨が後ろに抜ける形で初動があり、そこから滑らかに前傾しながらしゃがんでいく。また、二ーインといって足が内側に入るような動きを嫌うトレーナーの方もいますが、1タイプの人は大腿部が内旋して出力が入ってくるので、それでいいんです」
トレーニングの教科書的なものの中には、「膝を前に出さない」など伝えているものもありますが、「Bタイプの人は膝から初動します。なおかつ1タイプだと膝が内側に入ってくるので、『ダメなフォームの典型』に見えることがありますが、B1タイプにとってはそれが正解」と三土手さん。トレーニー自身が楽にできる形をつくっていくことが大切であるとあらためて強調します。
「どこかの筋肉に効かせるとか、そういうのはもっと先の応用的なテクニック。まずは無理なくできる形をつくることが大切で、それを怠ってしまうと、基本の部分ができずにレベルの低いところで止まり、伸びしろがなくなります。変に作り込まない、自然なフォームを意識しましょう」
★次回はデッドリフトについて解説してもらいます
文・撮影/木村雄大
三土手大介(みどて・だいすけ)
1972年8月26日生まれ、神奈川県横浜市出身。ウエイトトレーニングジムNo Limits代表。レッシュマスター級トレーナー。一般社団法人レッシュプロジェクト理事。
高校3年生のときにパワーリフティング競技をはじめ、20歳のときに全日本選手権110キロ級で史上最年少優勝。次々に日本記録を塗り替え、世界大会にも積極的に参戦。2000年の世界選手では、スクワット、ベンチプレス、デッドリフトでトータル1トンを記録し、ベンチプレスは当時の世界記録を塗り替えた。現在はトレーニングジムNo Limitsの代表として、トレーニングの指導にあたっている。自己ベストは、スクワット435キロ、ベンチプレス360キロ、デッドリフト320キロ、トータル1060キロ。4スタンスタイプはA2。
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