――その焦りが、摂食障害につながってしまったのでしょうか。
「そうだったと思います。当時18歳だった私は、将来への焦りと不安で自分を追い詰めていました。まわりの子がチャンスを掴んでいくのに、自分だけ取り残された感じがして。挑戦に後悔はありませんでしたが、やり場のない悔しさが湧いてきたんです。それで自力で無理なダイエットをして10kg落としました。痩せたはいいものの、それが引き金で摂食障害になってしまいました」
――摂食障害の症状を大まかに分けると、暴飲暴食を繰り返してしまう「過食」と、太る恐怖から食べられなくなってしまう「拒食」の2つだと思います。原島さんは、どちらの症状が強かったですか。
「過食と拒食の両方を経験しましたが、過食で悩んだ期間が長かったと思います。食べたい衝動が抑えられなくて、たくさん食べるんですけど本心は痩せたいので、無理に吐いたり下剤で出したりしていました」
――過食と拒食のどちらに陥るかは、どのように分かれていくのでしょうか。
「原因の背景は、本当に人それぞれです。私の場合は精神的な負担と、当時働いていた職場の環境が関係していたと思います。『接客業が好き』という思いもあり、モデル活動の資金づくりのためケーキ屋さんで働いていたんですけど、これがまた状況を悪くしてしまって……」
――ケーキ屋さんだと、食べる誘惑がたくさんありそうですね。
「そうなんですよ。まず働いているとケーキをもらえますし、新作の試食イベントもたくさんありました。自分は痩せたいと思っているのに、誘惑だらけの環境に耐えられなかったんです。目指すものがあるのに、食べてしまう。『何のためにがんばっているんだろう』と自己嫌悪に陥ってしまいました。そこからどんどん、症状がひどくなっていきました」
――症状が出ると、どのくらいの量を食べてしまうのですか。
「本当にひどかったですよ。ジャンクフードを『何人前だよ』っていうほど買い込んでしまったり、以前はつねに食べ物を探していました。ずっとソワソワしているんですよね。それこそ家に戻るまで、帰り道にある全部のコンビニに寄って食べ物を買ったりしていました」
――食べて幸せになるならまだしも、気分が落ち込んでしまうのがつらいですね。
「そうですね。気分が高揚する時と、落ち込む時のギャップがすごくて。当時はジャンクフードなど、小麦粉ばかり食べていたのですが、それらを食べた時に一旦幸せな感覚を感じるんです。ただ大量に食べた後に『何でこんなことしちゃったんだろう』と罪悪感に駆られて、吐いたり無理やり出したりしてしまう。そのループから抜けられませんでした」
(後編へ続く)
写真提供/原島さみら
取材・文/森本雄大
原島さみら(はらしま・さみら)
コンテスト選手兼パーソナルトレーナー。2020年にはSUMMER STYLE AWARDの関東大会、FINALの両方で優勝をはたす(いずれもBEAUTY FITNESS MODELにて)。自身が摂食障害で苦しんだ経験を活かし、摂食障害克復アドバイザーとしても活躍している。