ボディビルの起源は古く、「筋肉を鍛え、たくましい体を作る」という概念は古代ギリシャにも存在したといいます。鍛え上げた肉体を競い合う、のちのボディビルのような大会が初めて開催されたのは1898年。ウエイトリフティングとの同時開催でロンドンで行われました。日本で第1回目のボディビルコンテストが開かれたのが1956年(昭和31年)。JBBFの前身といえる日本ボディビル協会が誕生した翌年のことでした。
ボディビル競技で重要視されるのは発達した筋肉、体脂肪の少なさ、さらには全体の筋肉量のバランスなどです。舞台で筋肉の陰影をよりよく見せるためには極限にまで体脂肪を削ぎ落とす必要があり、選手たちはポージングトランクス(通称・ビルパン)のみを着用して勝敗を争います。
業界では、体脂肪をそぎ落としていくことを「絞る」、体脂肪を落とし切れなかった状態のことを「甘い」といいます。コンテスト会場などでよく聞かれる言葉に「絞りが甘い」というものがあり、これは「体脂肪が残っている」「絞り切れていない」といった意味になります。
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舞台では、選手たちは7つの規定ポーズによって審査されます。好き勝手にポーズを取っていいわけではなく、みんなで同じポーズを取り、そこで比較されていくのです。ポージングのテクニックは筋肉の見え方にも大きな影響を与える重要な要素になっています。
ちなみに、規定ポーズには「ダブルバイセップスフロント」「ラットスプレッドフロント」「サイドチェスト」「バックダブルバイセップス」「ラットスプレッドバック」「サイドトライセップス」「アブドミナル&サイ」があり、多くの人が連想する“ボディビルっぽいポーズ”は力こぶを誇示する「ダブルバイセップスフロント」、腕を体の横で曲げて大胸筋を寄せる「サイドチェスト」ではないでしょうか。マッスルポーズの代名詞ともなっている「マスキュラーポーズ」は規定ポーズではありません。
階級は体重によって分けられ、55kg級、60kg級、65kg級、70kg級、 75kg級、80kg級、85kg級、90kg級、90kg超級などのクラスがあります。日本一を決める日本選手権大会は無差別で争われ、2010年からは「筋の旅人」にも登場した鈴木雅選手が優勝を重ねています。ボディビルは、鍛え上げた筋肉、減量、そしてポージングのテクニックと、シンプルでありながらも多くのことが要求される究極の肉体競技といえます。
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文/藤本かずまさ