【スポーツと仕事】未来コーディネーター 小村大樹②




近年、スポーツビジネスの機運が高まっており、スポーツを仕事にしたいという学生も増えてきているという。しかし、発展途上の「スポーツ業界」への就職は容易ではないのが現状だ。そこで、「スポーツ業界」と「就職希望者」をつなげ、業界の発展を目指すことを目的として「NPO法人スポーツ業界おしごとラボ」を立ち上げた小村大樹氏に、その取り組みを語ってもらった。

座右の銘は「他人(ひと)に全力」
未来を創る人は全力で支えていきたい

――前回は小村さんがNPOスポーツ業界おしごとラボ(すごラボ)を立ち上げるまでを伺いました。ここは、スポーツ業界への就職を目指す人にとってどういう存在なのでしょうか?

小村 スポーツビジネスを教える大学や専門学校とは違い、学校とスポーツ業界の間にフラットな、誰でも来れる「磨き」「繋ぐ」場所だと思っています。球団やスポーツ業界の会社の多くは人事課がなく、教えている余裕もないので、私が人事課の代わりになりたいと思いました。また、選手に代理人がいるように、スポーツを支える仕事を目指している人の代理人がいても良いのでないかと思い立ち上げました。

――すごラボではどういうことを?

小村 まず、業界の方を招いた「すごトーク」と称した少人数の交流座談会をほぼ毎週開催しています。

――他の学校の授業や講義とは違うのでしょうか?

小村 最大15人での“座談会”であって、双方向のコミュニケーションを取れることを大事にしています。2年半で180回を超えました。どうしても講義だと講師の一方通行になり、知識を得るには良いですが次に繋がりません。私も講師をして感じたのは参加者と名刺交換をしたり、SNSで繋がっても、講師側からすると誰だか覚えていません。“座談会”というコミュニケーションを取りやすい空間だからこそ、次に繋がる人脈になります。スポーツ業界は狭いですからね。

――その回数が小村さんの人脈の広さを物語っていますね。

小村 それが私の強みでもありますからね。それにスポーツ関係者と交流することで、スポーツ業界を目指す子たちに、この人の生き方を知ってもらいたいという動機もあります。業界の方々がどのような経緯や使命感を持って取り組んでいるのか、その人自身のキャリアを知ることで自分の今後の取り組むヒントを得られるきっかけにもなります。仕事内容や業界知識も大事ですが、最も大事なのは既に成功・達成している方々の姿勢と未来の創り方です。そのような意図をもって開催しています。

――ただ、前回のお話にもあったように、それだけじゃないのがすごラボの特徴なんですよね。

小村 はい。みんな、就職したくてここに来ているわけですよ。私はそこを責任持ってやりたい。勉強っていうより、どういう未来を創ることがベストなのか、それぞれの強みを見つけてあげてマッチングさせることが大切です。

――具体的には?

小村 みんなスポーツを仕事にしたいとか、好きな球団に入りたいとか、競技を普及させたいという思いはあると思います。夢は大きくて、壮大なことを言うんですよね。でも面接とかで「あなたは何ができるの?」って聞かれると、そもそも何の仕事があるのかも知らない。だから彼らの強みをちゃんと引き出して、何ができるかというところを明確に伝えられるようにしないといけない。特にスポーツ業界は前にも話したように、即戦力が求められることが多いし、だから表向きの求人が少なく紹介で入ることも多い

――面接で、質問に答えられてない学生はよく見かけます。

小村 「御社は○○で、○○が良くて」って会社紹介しちゃう人とかいますよね。そんなの、面接するほうは知ってるよっていう話で。「志望理由は何ですか?」っていうのも、裏を返せば「あなたは何者で、何ができるんですか?」ということを採用する側は聞きたいわけです。

――そこまでできるようにするには、一人ひとりとしっかり向き合うことが大切ですね。

小村 だから学校みたいに大人数はなかなか相手にできないし、半年間の講座などじゃそれぞれの価値観や性質っていうのはわからない。なのでこのすごラボという小さな空間で、ほぼマンツーマンという形でやり、信頼関係をつくり、強みを明確にするからこそ、胸を張って紹介できる人材になるのです。私の座右の銘は「他人(ひと)に全力」です。一人ひとり進捗度合いも違うけど、未来を創ろうと思って向き合ってくれる人には、私も全力で向き合い、全力で支えてあげたい。すごラボでの卒業は未来が決まった時としています。それが私の使命だと思っています。

次回はすごラボがさらに発展していく過程をお聞きします

小村大樹(おむら・だいじゅ)
NPO法人スポーツ業界おしごとラボ 理事長。一般社団法人ファンダシオン理事、スポーツジョブライセンス認定委員長。小村スポーツ職業紹介所 所長。スポーツメンタルトレーナーとして多くのアスリートをサポートし、2006年に総合学園ヒューマンアカデミー「スポーツマネジメント講座」を立ち上げる傍ら、数百名の方向性を確立する個人プロデューサーとして活動。人生のゴール設定と今やるべきミッションを明確にする「デュアルメイキング」構築者として多くの人をアドバイス、業界へ橋渡しをしている。
NPO法人スポーツ業界おしごとラボ HP→http://sgolab.or.jp/

聞き手・撮影/木村雄大