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全力さん ~日本一全力なサポーターの応援のカタチ~ ②




「あの人、大丈夫……?」――日本代表戦のTV中継で抜かれた、まるで過呼吸になっているようなヘロヘロな応援姿が話題を集め、一躍時の人となった「全力さん」こと加納広明さん。ワールドカップロシア大会開幕まで2ヶ月となった今、VITUP!では全力さんに直撃!彼の考える応援・サポートのカタチを探るとともに、東京ヴェルディのサポーターとして活動する1日に密着した。

応援の強制は絶対にしない。
僕らが盛り上げて応援しやすい空気をつくる

――前回は加納さんが全力さんになるまでの経緯を伺いました。そもそもなんですけど、ご自身はサッカーやスポーツをやっていたんですか?

全力さん いや、まったく。走るのは好きですけど、土日はほぼ何かしらの試合があるし、平日の夜に軽くジョギングするくらいで。

 ――ではサッカーの好きなところは?

全力さん 上手く説明出来ないけど何となく全体的に好きです(笑)。サッカーの戦術の話とかされても全然わかんないですし、試合後に家に帰って録画を見たりはしますけど、試合中は試合を見てないですから。

――競技というより、応援・サポートすることが好き?

全力さん サッカー自体も好きだけど、盛り上がるっていう感じが魅力の1つでいいじゃないですか。プレーの細かいところじゃなくて、ゴールが決まったらワーッとみんなが湧く。その雰囲気が好きですね。きっかけはたまたま味スタにきてヴェルディの試合を見たことでしたけど、そういう意味では他のクラブのサポートにハマっていた可能性もあったと思います。

――同じサッカーでも、日本代表とヴェルディに同じくらい全力で向き合えるのはそのあたりが理由でしょうか。

全力さん はい。日本代表は日本代表、ヴェルディはヴェルディだし、ベレーザ(東京ヴェルディの女子チーム)はベレーザ、ジュニア・ジュニアユース・ユース(同小中高生チーム)もそう。そこに差はないですね。応援しているクラブの選手が代表に入っていないと代表に興味を持てないっていう方もいると思いますけど、僕としてはそれぞれ別物なのであまり関係ないです。もちろん、ヴェルディから代表に入る選手がいたら嬉しいですけど。

――いまや日本一有名なサポーターと言っても過言ではないと思いますが、全力さんが試合中に応援するうえで、何か大切にしていることってありますか?

全力さん 大切にしているというか、加納組が応援する「場所」はゴール裏のど真ん中ではなく端っこと決めています。

――端っこなんですか?

全力さん 端っこのほうって、一般層が多いんですよ。それこそ初期の自分みたいな。応援したいって気持ちはあっても、恥ずかしくてなかなか手を叩いたり、声を出したりができない人。その人たちの近くに自分たち加納組が場所をとって盛り上げて、一緒に応援しようっていう空気をつくろうと思ってるんです。

――初めての人でも応援に参加しやすくなりそうですね。

全力さん 僕たちは「サポーター体験ゾーン」っていうのを有志の人でゴール裏に設けているので、ぜひ初めてヴェルディのゴール裏に来たらまずはそこで“体験”してもらうのがいいかと思います。

――なかなか面白い試みですね。他に大切にしていることは?

全力さん もう一つポリシーというか、心掛けているのは「応援の強制はしない」ですね。僕たちは応援しやすい空気をつくるけど、声を出せとか手を叩けとか強制するようなことはしない。どうするかはそれぞれに任せることにしています。

――特に初めての人は、そういう空気だと嫌になったり2度と来なくなってしまったりすることもありそうですね。

全力さん サポーターがつくる雰囲気っていうのが一番の魅力だと思うので、自分たちは「安全なゴール裏をつくる」っていうのを掲げているんです。できるだけ暴言とかもなくしたい。サッカー自体の魅力を説明するのは難しいですけど、そういう点は日本代表を含めたサッカーの応援の魅力でもあり、ヴェルディのゴール裏の魅力でもあると思っています。

次回は、全力さんにとって「応援・サポートとは?」を語ってもらいます。

全力さん(本名:加納広明)
サッカー日本代表、東京ヴェルディのサポーターとして、常に全力応援でチームを鼓舞し続けている。アウェイ遠征時には相手チームのサポーターに囲まれて記念撮影を求められるなど、日本サッカー界で最も有名なサポーターと言っても過言ではない。なお年齢・職業は非公開とのこと。

聞き手/木村雄大 写真/須﨑竜太