闘いに向けて!トレーニングを敢行② 【水道橋博士の体言壮語】

格闘技イベント『HATASHIAI』に参戦するために、水道橋博士が限界に挑むトレーニングを重ねている。気になる、本気のチャレンジの行方をレポート。そして8月4日の試合の結果もお伝えします。格闘技のシロウト同士が拳を交えるイベント『HATASHIAI』で闘う博士。そこに至る経緯やモチベーションについては、前回の記事をお読み下さい。第一回はこちら。

猛暑の中トレーニングを積んで闘いの舞台へ

完全に文化系少年〜中年だった水道橋がトレーニングに覚醒したのは、加圧トレーニングとの出会いがあったからだろう。子供が生まれたのをきっかけに健康には目覚めていたものの、たんなる健康維持ではなく、自分の体力的な限界への挑戦が始まった。

ベストセラーとなった『博士の異常な健康』(2006年)、その第2弾となる『筋肉バカの壁』(2007年)という2冊の表紙写真で、加圧トレーニングのウエアを着ていることでも、相当入れ込んだ様子が分かる。加圧トレーニングへの熱は他の芸能人にも伝わり、藤原紀香さんも熱心にトレーニングを続けるなど幾人も後に続いた。

石井道場の石井基善氏 http://ishiidojo.com/ は、加圧トレーニングを含めて当時から全面的に博士をサポートしている。 石井氏から見ると、博士はいい意味でのオタク気質があり、やり始めたら結果を出したいという気持ちとの相乗効果で、質の高い練習ができているという。筋肉がつきやすい体質は変わらず、やった分だけの変化が見えやすい。

オタク気質といえば、石井直方東京大学教授が大会長(当時)を務める日本加圧トレーニング学会も観覧したというエピソードがある。実は筆者も会場で一緒だった。メモ片手に専門用語が続く講演に耳を傾ける芸能人が他にもいるのだろうか、と会場をくまなく見渡したが、さすがに見当たらなかった。

一般の人にとって、大人になってからの「追い込むトレーニングの壁」は高いものだが、博士の性格と濃厚な人生経験がそれを超えさせる。忙しい芸能生活を続けながら、幾つかの大会に参加してきたことも活きている。

「あの時(『筋肉バカの壁』)のテーマは、筋肉の鎧をつけて42.195キロを走れるかっていうのがテーマだった。浅草キッドが山本キッドになって、東京マラソンを走ると決めてやりきった。俺はモチベーションをいくつも重ねて、目標に向かって進むというのが好きだと思うよ」

トレーニングはチェストプレスに続き、TRXサスペンショントレーナーを使った負荷運動がしばらく続く。

たとえば格闘技選手のようにプロのトレーニングを見たことがあると、博士のトレーニングの強度はそれほどでもない、と思うかもしれない。しかし、どれくらい苦しいのか、という視点で見れば、その人にとっての100%を引き出すためトレーニングをするので、選手も一般の人も変わりはない、と石井氏は言う。プロでも手を抜く選手はいる。自分にとっての100%をやるかどうかはその人の覚悟次第だ。

『HATASHIAI(果し合い)』は素人同士が格闘技で戦うイベントが、博士は闘いのプロではなくても、「見せるプロ」としてのポリシーがある。

「素人同士の闘いとはいえ、チケットを買って見に来てくれるお客さんがいるし、ちゃんと当日まで身体を仕上げて登場して、ムードが盛り上がるようにしたい。本気で倒しに来ているということを互いにわかれば、怖いからやはり練習するよ。自分が練習をしていなかったら確実にやられるわけだから」

そして、メニューは実戦に近い内容へと移行していく。まずは石井氏がグローブをつけてボディの前面、サイドを連打する。ボディを打たせてパンチに耐える練習には、こんな狙いがあるという。

「我慢して体を守っていれば必ず自分の順番がやってくる。そして一発当たれば前へ、ということですね。全身に力を入れて我慢して、それを解いて動く。緊張、弛緩、緊張、弛緩のリズムを体で覚えていく」(石井トレーナー)

博士は石井氏の指導を忠実に守って少しずつ前へ進んでいく。試合が決まってから当日までの時間は限られていて、未経験者のやれることは少ない。しかし、スポーツの大会を目指してトレーナーと一緒に効率的に最善の道を突っ走るというのは、一般人にとっても選択肢として大いにあり得るのではないだろうか。

「苦しくて、時々フッと『何でこんなことをやってるんだっけ?』と思うこともあるけど(笑)、試合をやると言うのは日常ではあり得ないこと。非日常的なことをやるには、そこに向けて体や魂を磨かなければできない

そんな覚悟を持って、「原則運動禁止」の35℃以上の酷暑日が続く中、全身の筋肉痛に耐えながら練習を継続してきた博士。実際の試合の結果はどうだったのか。

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8月4日(土)に、東京都港区の東京タワー下会場で行なわれた『HATASHIAI』のメインイベントで、箕輪厚介(編集者)と水道橋博士が対戦した。年齢で23歳、身長で10数センチ、体重で10数キロのハンデがある試合だ。

1ラウンド、ゴングと同時に箕輪氏が突進し、同時にパンチを振り回す。きれいにヒットしたわけではないが、勢いに押されて博士はバランスを崩してしまい、ダウンをとられる。立ち上がった博士も真正面に前進して右のパンチを繰り出すが、箕輪の圧力に抵抗しきれない。この繰り返しとなり、合計3回のダウンがあって、試合はストップ。箕輪が勝利した。

博士は試合後に箕輪の控室を訪れて、強さに敬意を表し、「いい経験になりました」と告げた。会場の客だけではなく、インターネットでの中継を見た多くの人から、感動と両者への惜しみないリスペクトの声が寄せられた。また、この闘いにはさまざまな学びがあった、という感想も多かった。(敬称略)

次回は試合とトレーニングに打ち込んだ日々について、語ってもらう予定です。

(つづく)

水道橋博士(すいどうばしはかせ)
1986年にビートたけしに弟子入り、翌年、玉袋筋太郎と「浅草キッド」を結成。芸人としてはもちろん、文筆家としても数多くの著作を発表している。『藝人春秋2』(文藝春秋)『博士の異常な健康―文庫増毛版』 (幻冬舎文庫)など。日本最大級のメールマガジン『水道橋博士のメルマ旬報』の編集長、またユーチューバーとしても絶賛活動中。