「ダンスを通じた心の成長、そして文化として根付かせたい」~日本唯一の指導者技術コンクールの模様をレポート~

「ダンスが学校教育で必修科目になっていますが、それはダンスを上手い子を増やしていこうというわけではありません。ダンスを通じて、表現力とか協調性、あるいはコミュニケーションといった、要は心の成長を学んでほしいという狙いがあると思います」

そう語るのは、一般社団法人ダンス教育振興連盟JDAC(ジェイダック)の代表理事を務める久岡和也氏だ。ダンス人口の増加、昨今の全国ダンス部ブーム、健康運動としてのダンスの価値の高まりなど、これまでダンスに触れたことの無かった人がダンスに関わるシーンが増えるなか、ダンス市場の拡大、ダンスの新たな可能性・魅力の発見や価値向上に努め、ダンスを日本の文化として定着させるべく活動している。

「そのためには、やはり指導者の育成がもっとも大切だと思っています。“ダンスが上手く踊れなくてもダンスの指導ができる”ことを目指し、各地で研修会や講習などを行っています」(久岡氏)

その活動の一環として、11/18(日)に東京・国立オリンピック記念青少年総合センターで開催されたのが、優勝者には「文部科学大臣賞」が授与される『第4回 全日本ダンス教育指導者指導技術コンクール』だ。

このコンクールの特徴は、ダンスの上手い下手ではなく、指導技術を競い合う、日本唯一の大会だという点にある。今年の大会では全国から約300名の指導者がエントリーし、書類やビデオ審査などを経て勝ち残った8名が決勝戦に進出。ダンスインストラクターから会社員、学校教員まで、参加者の職種はさまざまであり、他の指導者の指導方法を見る貴重な機会でもある。

この日に行なわれた決勝審査では、1分間の指導の狙いの説明のあと、会場に集まった参加者たちを生徒に見立てて5分間の模擬授業を行うというもの。参加者たちは、この短い時間の中に指導ポイントを凝縮させてアピールを行っていく。

模擬事業を行なう参加者

ヒップホップやバレエなどダンスのジャンルは不問。この日はよさこいのチアダンス、というものもあった。発表者が舞台に立って何かをアピールするという一般的なコンクールとは違い、観客も参加して会場を盛り上げる点では、非常にユニークなコンクールだ。

また、決勝審査の合間にはパフォーマンスタイムが設けられており、学校のダンス部やスクールなどが創意工夫したダンスを披露した。

さらに、覆面ダンサー・ひとりでできるもんや、ロックダンスチーム・Hilty & Bosch、ダンス界のカリスマ・Sound Cream Steppersといったプロのパフォーマーも参加し、会場を大いに盛り上げた。

覆面ダンサー・ひとりでできるもん
ロックダンスチーム・Hilty & Bosch

コンクールの結果は、まだ少し緊張感のあるなかで決勝審査のトップバッターとして登場した松下隼司さん(大阪府・小学校教諭)が優勝。アフリカの伝統楽器と日本のソーラン節を合わせた「ニャティティソーラン」を題材にした個性あふれる指導を展開し、会場を“楽しい”雰囲気へと一変させた。「ニャティティソーラン」を選んだ意図は「アフリカのダンスは、みんなバラバラでも怒られない。“万糸乱れる”というところが大阪に合っている」と説明し、見事に優勝を勝ち取った。

見事優勝を果たした松下隼司さん
模擬事業では会場がひとつになった

「今回で4回目の開催となり、回を重ねるごとにいろいろな職業の方が参加されるようになってきています。今回は初めて小学校の先生が優勝したという点では、教育の面でも非常に意義深いことだと思います」

と久岡氏は大会を振り返った。

「去年は主婦の方が入賞していますし、ダンスがプロのようにうまいから優勝できるわけではありません。そういう意味では、多くの方にチャンスがある大会だと思います。ダンス教育に対する熱い思いをこの大会にぶつけにきていただけると嬉しいですね」

取材・文・撮影/木村雄大