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「小さなことを積み重ねることが、とんでもないところへ行くただ一つの道」 イチロー【名言ニュートリション】




プロ野球の世界記録を塗り替え続けるイチローの信条

昨年、通算4257本目の安打で通算最多安打数の世界記録を塗り替えたイチロー。数々の世界記録を持つイチローの精神はシンプルながら深く心に刺さる。

「小さなことを積み重ねることが、とんでもないところへ行くただ一つの道」

(2004年、メジャーリーグ年間安打記録を破った際の記者会見より)

もはやイチローの説明はいらないかもしれない。世界一のベースボールプレイヤーと言い切ってしまってもいいだろう。2000年にオリックス・ブルーウェーブから日本人初の野手としてメジャーリーグに飛び立つまで、7年連続の首位打者、ベストナイン、ゴールデングラブ賞と攻守に渡り日本の頂点を極めてきた。野手としてメジャーリーグで成功できるのか、アメリカのメディアからは厳しい声も上がったが、ルーキーイヤーからとんでもない数字を打ち立てた。シーズン242安打で首位打者に輝き、70年間破られなかったメジャーリーグの新人最多安打記録をあっさりと塗り替えた。バッティングだけでなく、盗塁王、ゴールドグラブ賞と攻走守でのタイトルを総ナメし、新人賞、MVPを獲得。1年目にしてメジャートッププレイヤーであることを知らしめたのだった。

イチロー=天才というイメージが強いが、チームメイトや野球関係者からは努力の天才と賞賛されることが多い。名将、野村克也氏は、イチローのことを「心・技・体のすべてを持っている。天才が努力すると恐ろしい」と語り、ぼやきのノムさんがイチローの精神面や人柄を称えている。

イチローはもちろん突然、開花したわけではない。小学生のころはチームの練習と別に、父親と毎日バッティングセンターに通い、最速の140kmのブースに入ることが日課だった。バッターボックスより1メートルほど前に立ち、繰り返し打ち続けていたのは有名な話だ。オリックスの2軍時代は寮で夕食をとった後に練習を再開し、ほぼ毎日夜中の1時、2時まで黙々とトレーニングを続けていた。地道な努力こそがイチローを支え、ヒットを1本、1本積み重ねてきたのだ。

© mtaira – Fotolia

メジャー4年目となる2004年10月1日。イチローは第1打席でレフト前ヒットを放ち、メジャーのシーズン最多安打に並ぶと、第2打席でセンター前にクリーンヒットを放ち258安打目を刻んだ。84年間もの間破られることがなかったジョージ・シスラーのメジャー記録を塗り替えた。メジャーに移籍するときには厳しい評価だったが、すっかりメジャーの顔となり、世界中の選手やファンが賞賛を送り祝福した。この試合の後のインタビューでイチローが語った言葉が、「小さなことを積み重ねることが、とんでもないところへ行くただ一つの道」だ。

本名の鈴木一郎の印象と同様に、派手さはなく実にシンプルな言葉だが、継続は力なりという普遍的なメッセージをイチローが教えてくれている。あれから12年。昨年の2016年6月15日には、二塁打で4257本目を決め、ピート・ローズの持っていたメジャー通算最多安打記録までも塗り替えた。この記録はプロ野球通算最多安打数の世界記録としてギネス記録としても認定されている。

その数日後、イチローの自宅で祝いのパーティーが開かれ、日本からは名球界入りを果たした稲葉篤紀氏らも招かれたが、イチローは名だたる先輩たちに断りを入れて中座し、1時間半自宅のトレーニングルームで筋トレをしてから戻ってきたという。世界記録を打ち立ててもなお、おごることなく黙々と努力を積み重ねる姿は変わらないのだ。

「イチ」は急に10にはならない。コツコツと1を積んでいくことを辞めなければ、1はやがて10にも100にもなるのだろう。初めて上げたバーベルの重さが10kgだとしたら急に100kgは上がらない。あと1kg、あと1回……。そんな小さな積み重ねが100kgのバーベルを上げる道筋となることをイチローが示してくれている。世界記録とまではいかなくとも過去の自分を塗り替えれば、いつかとんでもない誇れる自分に出会えることだろう。

文/山口愛愛