ボールを打つためのスキルとは? バイオメカニクスが解明




多くの競技で反動を用いて打っている

バットやラケットなどの打具を使ってボールを打つという動作は、野球やテニス、ゴルフなど多くの競技に存在します。では、これらの動作に共通するスキルとはどんなものでしょうか?

第1回で紹介したダイナミックな動作をするための「反動」「捻転」「ムチ動作」という3つのポイントに沿って考えてみましょう。

まず「反動」ですが、野球にしろテニスにしろ、打つ動作はバットやラケットを大きくテイクバックしてから行います。そういう意味で、多くの競技では反動を使ってボールを打っていることがわかります。

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体幹を捻ることでより大きな力を生み出す

次に「捻転」ですが、このスキルは体幹部を、肩を中心とした上胴と、腰を中心とした下胴とに分けるて考えるとわかりやすいでしょう。例えば野球のバッティングで見るとまず腰を中心とした下胴が回転し、それに少し遅れるようにして上胴が回転します。すると、下胴と上胴の間に捻りが生じ、体幹でより大きな力を生み出すことができるのです。

また、上胴を下胴より少し遅れて回すことで、前回の「投げる」動作の回で解説した運動連鎖を体幹部でも生じさせることができます。そして、体幹部の回転に遅れて上肢(腕)を回すことで腕・手をムチのように振ることができるのです。

この際、腕の力をできるだけ抜いて振ることが、運動連鎖をスムーズにし、ムチのように振るためのポイントです。

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スウィートスポットでボールを捉える

腕の力を抜くことの理由はもう一つあります。打つ動作で重要なのは打具のスウィートスポットでボールを捉えること。それによって、打球をより遠くに飛ばすことができます。

打具を振るエネルギーを腕ではなく体幹部で生み出すことで、より大きな力が発揮できるだけでなく、腕はボールをスウィートスポットで捉えるための位置調整に集中することができるのです。

深代千之(ふかしろ せんし)
1955年、群馬県出身。東京大学大学院教育学研究科修了。教育学博士。東京大学大学院総合文化研究科教授。日本バイオメカニクス学会会長。(一社)日本体育学会会長。国際バイオメカニクス学会元理事。身体運動を力学・生理学などの観点から解析し、理解するスポーツバイオメカニクスの第一人者。『<知的>スポーツのすすめ』(東京大学出版会)、『骨・関節・筋肉の構造と動作のしくみ』(ナツメ社)、『運動会で1番になる方法』(ASCII)など多くの著作がある。