前回は“初めてのレース”に参加するまでのアドバイスをまとめましたが、1回レースを走ると自分の課題が色々と見えてくるはずです。「もっと速く走りたい」「タイムを短縮したい」というのは、レースを走るのであれば誰もが感じる課題だと思いますが、前半は調子良く走っていたけれど後半失速してしまったのか? それとも、そもそも速いスピードで走ることができなかったのか? など具体的な課題は人それぞれ異なります。そうした自分の課題を明確にし、それを乗り越えるための練習法を考えることが必要。そうやって頭を使って課題を解決していくことも大人のスポーツの醍醐味だと思います。
後半失速してしまうということは、前半のペースが速すぎるということなので、普段の練習から少しペースを抑えて長い距離を走ることが有効です。ハーフマラソンであれば、その半分の10kmを走れれば、完走することもできると書きましたが、タイムを短縮することを目指すのであれば練習で15km、20kmという距離を走ってペースを掴んでおくことも必要です。レース前に1回でも2回でも、こうした距離を走っておくと全然違いますので、一度試しておくといいでしょう。
絶対的なスピードが足りないのであれば、自分よりも速い人と一緒に走る練習が効果的です。自分だけで、いつもよりペースを上げて走ろうとしても、なかなかうまくいかないもの。自分よりも速い人と走ると、多少無理をしなければならないので、始めはキツく感じるでしょうが、そうやって限界を乗り越えることでスピードを高めることができます。
タイムを短縮することを狙うのであれば、ペースを考えて走ることが必要となります。そんな時に有効なのは普段の練習から走行距離やタイム、ペースなどを記録しておくこと。今はスマホのアプリでそうしたログを簡単に取ることができますので、ぜひ活用してみましょう。ただ、レースでスマホを持って走るのは重いので、できればログを取れるランニング向けウォッチを入手しておくといいですね。普段からログを取っていれば、モチベーションを高めることにもつながりますし、オーバーワークを防ぐという点でも有効です。いつもと同じように走っているつもりなのに、どうも普段通りのペースで走れないという場合は、疲れが溜まっているのかもしれないので、思い切って練習を休んだり、歩くだけにしておくなど対策をすることができます。ログを付けておけば、その月に何km走ったのかというデータも残すことができます。ただ、月間に何km走るという目標を立てるのはやめておいたほうがいいでしょう。距離を目標にすると、どうしても月末に「あと何km走らなければ」と無理することになり、ケガの原因となってしまいます。
金哲彦(きん・てつひこ)
プロランニングコーチ、駅伝・マラソン、陸上競技解説者、ランナー。福岡県北九州市門司区出身。早稲田大学教育学部卒業。在学中競走部に属し、中村清監督の下、箱根駅伝で活躍。卒業後はリクルートに入社し、陸上競技部を創設。1987年には別府大分毎日マラソンで3位に入る。1995年より同部監督に就任。同部の消滅後は、陸上のクラブチーム・ニッポンランナーズを創設する。現在は、テレビのマラソン・駅伝中継の解説も務める。最新の著作は『体幹ウォーキング』。
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