A.気持ちよさを感じて、ハッピーになるためです。
これまで20回以上にわたり続いてきたこの連載ですが、今回で最終回になります。これまで楽しみにしてくださった読者の皆様、ありがとうございました。最後ということで、私からみなさんにメッセージをお届けしたいと思います。
これまで専門的な言葉なども用いながら、ストレッチについて解説をしてきました。ですが、ストレッチと一口に言っても、非常に間口が広く、様々な種類のストレッチが存在します。極端に言えば、前回説明したように階段を上り下りするだけでも、心がけ次第ではストレッチになります。
そのように種類こそたくさんありますが、その目的は大きく分けると、硬くなった筋肉をほぐし「体の調子を整えるため」と、気持ちいいと感じることで「心の調子を整えるため」との二つに分類してもいいでしょう。そして多くの人は、前者の「硬くなった筋肉をほぐす」目的でストレッチをするかと思います。
筋肉をほぐすことを目的としている人に向けて、これまで第11回や第19回のように、専門用語を使って解説した回もありました。同時に、ことあるごとに、「気持ちいい」と感じることの重要性についても述べてきました。
日常レベルにおいては、必ずしも専門的な知識を駆使してストレッチを行なう必要はありません。「気持ちいい」と感じて心や体がリフレッシュするだけでも十分です。
気持ちいいと感じることができれば、毎日のストレッチも長続きしやすいでしょう。そして、その気持ちよさを味わうために、正しい方法を学ぶ必要があるということなのです。
第1回でもお話ししたように、ストレッチはあくびのようなものです。人間だけでなく、筋肉(骨格筋)を持った生物は、筋肉が硬くなり何らかの不快感を得たときに、ストレッチのような動きをします。例えば、猫が前足を前に出して踏ん張り、後ろ脚を伸ばしてお尻を突き出すポーズも、ストレッチといえます。
しかし現代人の多くは、同じ姿勢での作業やストレスによる緊張など、ストレッチが必要な状態にありながら、動物のように自然にストレッチを行なうことは少ないと思います。ですから、専門店ができるほどストレッチのニーズが高まっているのでしょう。
ストレッチとは多くの生物に備わった生きる上での機能とも言えるものなので、本来とてもシンプルで日常的な行動であるはずです。体が「気持ちいい」と感じれば、心も幸せな気分になることができます。
ですから、私からのメッセージは「その一点です。ストレッチで体を動かし、気持ちいいと感じてください」という一言です。もちろん、その先には専門知識を学ぶという道もありますが、まずは筋肉を伸ばすことで気持ちよさを感じ、ハッピーになることがストレッチの本質的な目的だと私は考えています。この連載がその一助になれば、望外の幸せです。
1960年、大阪府出身。 特定非営利活動法人日本ストレッチング協会理事長。日本体育協会認定アスレティックトレーナー。 帝京大学講師。早稲田大学教育学部卒業、順天堂大学大学院体力学専攻修了。 2001年「すとれっち塾戸田公園店」開設。専門分野はアスレティックトレーニング、スポーツ科学、アスレティックリハビリテーション。リコーラグビー部など、多数の社会人・大学チームのストレングスコーチ、および日本代表ボートチームのフィジカルサポートなどを務める。「ストレッチまるわかり大事典」(ベースボール・マガジン社)「アクティブBODYストレッチ」(日東書院)など著書多数。
日本ストレッチング協会HP