全力さん~日本一全力なサポーターの応援のカタチ~③




「あの人、大丈夫……?」――日本代表戦のTV中継で抜かれた、まるで過呼吸になっているようなヘロヘロな応援姿が話題を集め、一躍時の人となった「全力さん」こと加納広明さん。ワールドカップロシア大会開幕まで2ヶ月となった今、VITUP!では全力さんに直撃!彼の考える応援・サポートのカタチを探るとともに、東京ヴェルディのサポーターとして活動する1日に密着した。

サポーターはチームを「支える人」
自分たちができることを全力でやるのみ


――これまでのお話を伺っていると応援・サポートするのは楽しいことだと思うのですが、現実は、Jリーグ全体として観客は減少気味だし、ヴェルディは……

全力さん はい、今もガラガラですね。

――何か、打開策みたいなのはあるんでしょうか。

全力さん ヴェルディの場合はまずJ1昇格がカンフル剤となるのは間違いないと思います。でもそれは簡単なことじゃないし、僕らサポーターが直接的にどうにかできることではないです。

――サポーターができることとは?

全力さん 全力で盛り上げて、観客を減らさない努力をすること。あとは……子供を応援に巻き込むことは意識していますね。子供がきてくれればその家族もきてくれますし、数年後も彼らが大きくなったらきてくれるし。もちろん、単純に楽しんでもらいたいのが一番です。

――――そのためには、全力さんはブーイングもほとんどしないと聞きました。

全力さん はい……昔はしてましたけどね(笑)。でもだんだんわかってきたんです、自分には向いてないって。

――するよりは、選手を鼓舞してあげたい?

全力 ブーイングが出るような試合内容だったら、そういうのは選手たちが一番わかってますからね。でも、ブーイングするのが悪いこととは思いません。いいと思います。ブーイングがないと、フワっとなっちゃうときもありますから。でも、自分は無理ですね。選手たちが必死に戦っているのを見ていますから。

――したい人はすればいいと。

全力さん もちろん状況によるとは思いますけど、気持ちの表現の仕方は自由だと思います。でも、だからといってブーイングしたくなるような試合内容のときに拍手するってことはないですけど(笑)。ただ空気を悪くしてしまうのは良くないと思うし、一番大切なのはブーイングか拍手か、その時のチーム状況を考えての選手の後押しをして、次につなげることだと思います。

――チームをサポートするって、言ってみれば趣味じゃないですか。それをそこまで考えてやっているのはすごいと思います。

全力さん 趣味とは言われるけど、趣味ではないんですね。なんだろう……ライフスタイル。

――かっこいいですね(笑)。でも、ホームはもちろんアウェイの試合も全国各地にほとんど行っていて、なかなかお金もかかっていいますよね?

全力さん お金は必要経費です(笑)。学校や仕事みたいに、行くのが当たり前みたいな感じですから。逆に言えば、自分は趣味がないです。平日仕事して、土日はサポートしに行って、趣味の時間がなかなかなくて。アウェイの遠征も、行けるところは車移動でみんなで割り勘しているので、お金はそんなに掛かりませんよ。九州や四国はさすがに飛行機で、たまに夜行バスを使ったりもしますが。

――最後に聞きたいんですけど、改めて、全力さんが考える「サポーター」とは?

全力さん その言葉の通り、「支える人」だと思います。応援を通じて、チームと一緒に戦っている人。だからこそ、クラブのスタッフの人にも、もっとこうしてほしいみたいなことはヴェルディに限らずあると思います。あるんですけど……特にヴェルディは、スタッフの人手が足りないとか、お金がそこまであるわけではないのは自分たちもわかってますから、あれやれこれやれはどうしても言えないんです。スタッフもそれはわかってはいるけど、できてない。だから言えないですね。

――サポーターはサポーターとして、やれることを全力でやると。

全力 はい。やっぱりサポーターがやれることってある程度は決まってるんです。だからまずは、スタジアムで選手たちが戦いやすい雰囲気をつくって、応援という形でチームをサポートしていくことが、誰でもできる大切なことだと思います。

※次回は、全力さんの試合日の1日に密着!?。

全力さん(本名:加納広明)
サッカー日本代表、東京ヴェルディのサポーターとして、常に全力応援でチームを鼓舞し続けている。アウェイ遠征時には相手チームのサポーターに囲まれて記念撮影を求められるなど、日本サッカー界で最も有名なサポーターと言っても過言ではない。なお年齢・職業は非公開とのこと。

聞き手/木村雄大 写真/須﨑竜太