【岡部友の“天使への階段” 第2回】能動的にできる女性に増えてほしい




“美尻のカリスマ”岡部友さんにもよる連載コーナー第2回。アメリ留学で学んだこと、そして女性を対象としたトレーニングを始めるきっかけが、語られています。

必ずしも人と同じである必要はない

――フロリダ大学運動生理学部に入学してみて、陸上に打ち込んでいた時とは違う世界が見えたのではないですか?

岡部:トレーナーになろうと思って、その勉強をするためにアメリカに行ったんですけど、周りもみんなトレーナーになりたい人たちばかりなんです。だから高校の時に何か競技をやっていた子たちが多くて、みんなフィジカルが高くて普通の能力が違いました。体からのパフォーマンスが全然違ったという印象がありますね。

――そうした能力の部分もそうですが、異国の人間がアメリカ人のコミュニティに入っていく難しさもあったのでは?

岡部:最初は難しさを感じましたね。言葉一つでも、うまく喋れないとか、第二か国語で喋っているという、劣等感みたいなものがありました。それによって声が小さくなってしまって、「なんて言ったの?」と聞き返されたりして。声が小さいから聞こえなかっただけなのに、私の英語が悪かったんだという解釈を勝手にしてしまって、そうするとドンドン自分の英語に自信が持てなくなってしまうんです。

――最初は言葉の壁にぶつかったんですね。

岡部:でもアメリカ人っていろいろな人がいるので、アクセントがある英語を喋ることは普通なんですよね。インド人もいれば、イギリスの人もいるし、ラテンの人も英語を喋るし、スペイン語が母国語でも第二か国語として英語を喋る人もいる。私は第二か国語目だとバレることがすごく嫌だったんですけど、アメリカ人は「この人、第二か国語で喋ってる」なんて誰も気にしてないんです。私の勝手な妄想の問題だったんです。自分で勝手に距離とか壁を作っていただけだって気づいてからは、文法が間違っていたり、言葉が出てこなかったりしても、大きな声で喋るようにしました。それだけで通じるんですよ。

――結局コミュニケーションって同じ日本人同士でも、丁寧な言葉とかきれいな日本語でなければいけないわけではないじゃないですか。声が大きいとか、表情があるとか、そういうことですよね。

岡部:そうです。それと同じなんですよね。それがわかった瞬間に、気にしなくていいんだって思って。そうすると喋るから英語力も上がってくるんです。これは本当に大きな学びになりました。自分の中で勝手に壁を作っていてはダメなんだということを学びましたね。

――トレーナーの仕事を志した頃は、日本にパーソナルトレーナーってどれくらい浸透していたのですか?

岡部:まだ全然です。それこそ一般の人がパーソナルトレーナーをつけるという感覚はなかったと思います。パーソナルトレーナーをつけるのは、スポーツ選手か、芸能人とかセレブ。そういうイメージができていた頃です。

――その時代にパーソナルトレーナーを仕事にするのは大変だったのではないですか。

岡部:そんなことを考えてやっていなかったんですよね。自分がやりたいことをやろうと思っていただけなんです。日本に帰ってきた時に、「そういえばこれで生計を立てていくのか」って初めて思ったんです。ただ自分がやりたいというだけで、仕事をどうやって始めるのかも考えていなくて、計算はまったくなかったですね(笑)。

――当時は間口も狭いので、最初は女性に教えるという感じでなく、男性に教えるつもりだったんですよね?

岡部:もちろんそうです。アスリートを見たかったんです。アスリートのモチベーションだったり、体の使い方だったり、そういうのを見る勉強をしていましたから。

――そこからなぜ女性を対象にという考えになっていったのでしょうか?

岡部:日本に帰ってきてから、私が周りから浮いているのがわかったんです。みんなモテるために、可愛くなるために必死だったように思ったんです。「何でみんなと同じことやってるの?」と思ったんですよ。

――流行りを追うとか、そういうことですか?

岡部:そうです。みんなが持っているから同じものを持つとか、みんながこういうメイクだからとか、みんなと同じになりたがるんですよね。だって、「今年のメイク」とかおかしくないですか? 「今年のメイク」ってどういう意味ですか。あとは「春夏限定のメイク」とか。去年とどう違うの? 冬とどう違うの?って。そういうマーケティングに騙されすぎてるいというか、人の意見に流されすぎている女の子が多いなって思ったんですよね。「春夏メイク」と言われて、そこには何の理由もないのに、どうしてこれなのかという疑問を持たなくなっているんです。その風潮はおかしいんじゃない?ってずっと思っていました。

――みんなと同じじゃないと不安という人も多いのでしょうね。

岡部:同じである必要がないんですよね。私のお客さんでも「これは春夏の色だから秋には使えないの」って言っていた人がいるんです。春夏の色って言っても普通の茶色なので、そんなの誰も気づかないですよ(笑)。そこまで洗脳されているのかと驚きました。茶色をつけたいからつけるのではなくて、春夏の色だからと言われたからつけているわけですから、そこには自分の意見がないということじゃないですか。すごく受動的ですよね。これはあくまでも一つの例ですけど、受動的ではなく、能動的にできる女性が増えてほしいなというところが、女性を対象にしたトレーニングを始めるきっかけの一つですね。

撮影・保高幸子 取材・佐久間一彦

岡部友(おかべ・とも)
1985年12月6日、横浜市生まれ。株式会社ヴィーナスジャパン代表取締役。高校卒業後、アメリカで運動生理学、解剖学を学び、フロリダ大学在学中に、プロアスリートに指導できるスポーツトレーナーが保持するNSCA‐CSCSの資格を取得。帰国後、女性専用パーソナルトレーナーを経て、2016年3月、女性専用のフリーウェイトジム「Spice up Fitness」を東京・南青山にオープン。2017年9月には原宿に2店舗目をオープンした。“美尻のカリスマ”として女性を中心に絶大な支持を集める。